アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
*216
-
〜恋side〜
3月22日 12時
「着いたー!」
「うぇ…吐く…」
「恋大丈夫?」
「とりあえず旅館行くぞ。」
広島に着いて、恋は口元を押さえた。
千秋に体を支えてもらって、なんとか吐かずに耐えていた。
「恋、荷物貸せよ。」
「え…?」
「そんなんで運べねえだろ。持ってやるから貸せって。」
傑にそう言われて、キャリーバッグを半ば強引に持っていかれた。
「恋、今日は寝なかったからね…」
新幹線で広島にやってきたのだが、最初は気分が上がっていて、眠くならず、このままいけるかと思っていたら、最後の方で思い切り酔ってしまったのだ。
「いけるかと、思ったんだけど…おぇっぷ…」
「まあここの空気はいいし、ゆっくり深呼吸してれば治るよ。」
千秋にそう言われて頷く。
「ほら、行くぞ。」
「恋、千秋、早く!」
前を歩く傑と明希に呼ばれ、恋と千秋も歩き出す。
東京とは違い、もうすでにこちらでは桜が見られた。
「桜綺麗だな…」
「だね。景色見ると乗り物酔いは良くなるっていうし、だんだん落ち着いてきた?」
「うん。」
傑から荷物を受け取り、4人で旅館を目指す。
暖かい春の風が吹いていて、歩くのも心地よかった。
「あの、4人で予約してた木之本ですけど…」
「はい、木之本様。お待ちしておりました。お部屋にご案内いたしますね。」
にこりと笑って案内してくれる従業員に従って、泊まる部屋に入る。
「何かお申し付けがありましたら、そちらの内線からお呼びください。お食事は食堂で、朝は8時から、昼は12時から、夜は19時から、それぞれ2時間ずつ、バイキングをご用意しております。」
「わかりました。」
「温泉は24時間使えます。内湯も付いておりますので、ぜひご利用くださいませ。」
「ありがとうございます。」
一通りの説明をすると、従業員はお辞儀をして部屋を出ていく。
荷物をなんとなく整理しつつ、部屋の中を見回す。
4人で同じ部屋に泊まるため、大部屋を取ったからかかなり広く感じた。
襖が取り払われ、2部屋をつなげたような形で、片方には机と座椅子があり、両方の部屋から海が見えた。
「綺麗だね!桜も見えるよ。」
「かなりいい部屋だな。」
3泊して、4日目には帰る予定のこの旅行。
何をするかなどは全く決めていないが、それでも恋たちはかなり浮かれていた。
「今日はどうする?!とりあえず市内観光する?」
楽しそうな明希を見て、恋は安心する。
ここ最近、不妊のことでずっと落ち込んでいたからだ。
「だな。とりあえず今、昼飯食う?外で食うかバイキング行くか…」
傑がチラッと時計を見てそう言った。
「市内観光するなら外で食べない?」
「いいね。」
千秋の提案に、恋も頷く。
広島といえばお好み焼きだな…などと頭の中で思い浮かべ、お腹が空いてきた。
「あ、ちょい待ち、報告してから。」
「え?なんの報告?」
傑がスマホを取り出し、恋たち3人で画面を覗き込む。
「んだよ、見るなって。」
「なんの報告か気になるだろ。」
「お前らの旦那様に連絡するの。無事つきましたって。」
傑はそう言うと、琉たち3人とのLINEグループを開き、無事旅館に到着したことを報告した。
「えー!それくらい自分でするのに。」
「忘れそうだから心配なんだろ。明希は言うかもしれないけど、恋は絶対言わないからって、琉さん言ってたぞ。」
「あー…あはは…」
確かに、いちいち報告することでもないかな、と思ってしまう。
琉が心配するほど、恋は弱くない。
…と、自分では思っている。
「でも、紘さんたちは心配しすぎなんだよね。」
「それね!」
「明希が心配されてるのは、最近落ち込んでたからだろ。」
「そうじゃなくても心配されるじゃん?」
「まあそれはな…」
「…お前ら3人揃うと3倍危ないんだよ。だから心配されるんだ。」
話している恋たちに、そう突っ込む傑。
恋たちは顔を見合わせて首を傾げた。
やはり自覚は、ない。
「まあいいわ…飯食いに行こうぜ。」
「行こう行こう!」
「やば、めっちゃ楽しい。」
「ね。ずっと楽しみにしてたし。」
恋たちはニコニコとしながら旅館を出て行く。
この旅行が、何もなく終わるはずがないことを、恋たちはまだ知らない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
419 / 832