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〜千秋side〜
4月9日
(緊張するな…)
今日から、千秋は専門学校生。
今日はその入学式だ。
「あっ。」
隣に座ってきた男には見覚えがあって、千秋は思わず声をあげた。
「あ!受験の時の!」
「どうも。」
受験の日にも隣の席になった、同い年の男だった。
「君も受かったんだね!」
「うん。」
「会えてよかった!僕、望月楓(もちづきかえで)。」
「僕は聖川千秋。よろしくね。」
「よろしく!」
千秋たちが通う保育専門学校は、1クラス40人で4クラスの160人が通う学校だ。
入学式の席順は自由だが、クラスごとに大体の場所が分かれているため、楓は千秋と同じクラスらしい。
「同じクラスみたいだね。」
「そうだね。なんか嬉しいよ。同い年の子がいるって。専門学校だからいろんな年齢の人がいるけどさ。」
「うん。僕も嬉しい。」
千秋は、初対面の男性には、どうしても恐怖心があったが、楓に対してはそれがなかった。
楓の持つ優しい雰囲気が、恐怖心を無くしてくれているのかもしれない。
「専門学校に行って、誰とも友達になれなかったらどうしようかと思ってたよ。」
楓はそう言うが、あのコミュニケーション能力があれば、友達は多く作れそうだと思った。
「楓くんなら、誰とでも友達になれそう。」
「そうかな?あ、同い年なんだし、楓でいいよ。僕も千秋って呼んでいい?」
「うん。」
それから、楓と少し話していると、入学式が始まった。
教授たちの紹介や、様々な話があったが、入学式は思ったより早く終わった。
それから、クラスを一度案内されて、今日は解散になった。
「千秋はどうして、保育士さんを目指したの?」
楓と帰り道を歩いている時、そう聞かれた。
「うーん…単純に、小さい子が好きだっていうのと、前からずっと興味があったんだ。」
「そうなんだ。」
「楓は?」
「僕もそんな感じ。高校卒業するタイミングでも、ここを受けたんだけど、その時はいろいろあって行けなくなっちゃって。」
「そうだったんだ…僕は受けてもないなぁ…」
「どうして?興味あったんでしょ?」
「僕、高校は通ってないんだ。」
「えっ、そうなの?!でもここって、保育専門学校の中では上位校だよ?」
「家庭教師みたいな、そういう人がいたから…高卒認定試験も17歳で受けたよ。」
「ええっ?!千秋ってものすごく頭いいんだね!!」
「そんなことないよ。経営とか、そういう勉強ばかりしてきたから…」
「経営?!すごいな…」
千秋は、高校に通う年頃の頃は、烏沢にいた。
烏沢では、教養と知識を身につけろと言われ、たくさん勉強をさせられた。
「受けるなんて考えにも至らなかったんだ、その当時はね。」
「そうだったのかぁ…」
「楓は、どうして今のタイミングだったの?僕は私生活が落ち着いたからなんだけど…」
「僕もそうだよ。去年、ずっとあった問題が解決してさ。それで、なんとか今年になって落ち着いて、お金も支援してくれる人がいて、受けられたんだ。」
「そっか…受けられてよかったね!」
「うん!僕たち、なんか少し似てるよね。親近感湧くなぁ。」
楓の言葉に、千秋は微笑む。
同年代の友人が、恋と明希と傑だけだった千秋にとって、楓と友人になれることは嬉しいことだった。
「あ、ちょっとごめん。」
スマホが着信を知らせ、楓に断りを入れて電話に出る。
「はい、もしもし。」
『もしもし。入学式終わったのか?』
「はい。紘さんは会社は?」
『今日は早めに切り上げた。迎えに行く。』
「大丈夫ですよ。」
『今どこだ?』
「学校の最寄り駅の近くです。」
『5分で着く。俺が迎えに行きたいんだ。』
「わかりました。駅前で待ってますね。」
思わずクスリと笑って、電話を切る。
「誰?家族、じゃなさそうだったね?」
「うん…恋人…」
「恋人っ!!!!」
ものすごい食いつきを見せた楓に、なんだか恥ずかしくなる。
「えっ、ちょっと、よく見たら指輪つけてるじゃん!!恋人ってか婚約者?!」
「うん…そう、かな…」
「わー!!なにそれ、すごい話聞きたい!でも今の感じだと迎えに来るんだよね?僕はもう帰らないとだし…明日絶対話聞かせてね?!」
「うん。」
楓が必死で、クスクス笑ってしまう。
「また明日ね!」
「うん、また明日。」
手を振って楓と別れる。
そのあとすぐに来た紘の車に乗って、千秋も家に帰った。
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