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〜恋side〜
4月20日 土曜日
「…なんか緊張するんだけど!!」
「俺も緊張する。」
明希と2人で病院にやってきた恋。
今日から毎週一回、妊娠補助薬の投薬をするのだ。
恋の場合は、3ヶ月もすれば器官ができ、そこからは薬を徐々に減らしていく。
が、明希の場合は、1年間これを続け、来年には月に一回の投薬を続けるそうだ。
産科でなくても、外来で投薬することができるため、零や隆文が務める大きな病院、K病院にやってきた。
ここ最近では、投薬する患者が増えてきているらしく、妊娠補助薬外来、などというものまでできているK病院は、特に投薬の患者が多い。
「わー、混んでるね。」
「だなぁ。まあとりあえず座ってよう。」
「そういえば、この病院にも近々産科ができるらしいよ!」
「まじか。」
恋たちがこの前行った産科は、1番近いところだったがそれでも1時間弱かかる。
ここなら15分程度で着くため、ありがたい話だった。
「おや、恋くん?」
「あ、お義父さん!」
たまたま通りかかった隆文に声をかけられた。
「琉さんのお父さん?」
「そうそう。」
「初めまして!うえ…木之本明希です。」
「木之本…というと、翔也くんの奥さんかな?」
「はい…」
少し照れて頷く明希に、隆文が微笑む。
「2人は今日はどうしたんだ?」
「妊娠補助薬の投薬に。」
「そうか!」
「お義父さんはどうしたんですか?」
「これから昼休憩なんだ。」
「えっ、これから?!」
ふと時計を見れば、もう14時を回っていて、昼休憩にしてはだいぶ遅い。
「小児外来が長引いてしまってね。」
「そうだったんですか…お疲れ様です。」
「いやぁ、眞弓の弁当があると思えば頑張れるよ。それじゃあまた。」
隆文はニコニコとしながら手を上げて去っていく。
「…眞弓さんって、誰?」
「どう考えても奥さんだろ。」
「あ、そっか。琉さんに妹いないもんね。」
「お義母さんとお義父さん、すごく仲良いんだよね。」
「みたいだね。いいなぁ、あんな風にいつまでも仲良い夫婦!」
「羨ましいよな。俺もあぁなりたい。」
「わかるー。」
「木之本さん、どうぞ。」
「あ、先行ってくる。」
「ん。終わったら受付んとこで会おう。」
「おっけー。」
明希が先に病室に入る。
とはいえ、明希の場合、これはただの投薬ではなくて不妊治療になる。
そのため、産科ができるまでの間、臨時できているらしい産科医に診てもらうらしい。
「赤津さん。」
名前が呼ばれる。
…が、恋は反応しない。
「赤津さん。赤津恋さん。」
看護師がキョロキョロと辺りを見回しながら再度名前を呼ぶと、恋はハッとした。
(そうだ、赤津って呼ばれるんだった。)
慣れておらず、反応できなかったことと、また改めて結婚を実感し、恋は恥ずかしくなった。
「こちらです。どうぞ。」
「すみません…」
ぺこっと軽く頭を下げて、外来の診察室に入る。
「今日は投薬ですね。…ん?赤津って…もしかして赤津先生の息子さん?」
「あ、いえ…息子ではないんですけど…」
医者が慣れた手つきで注射の用意をしながら、話をしてくる。
「息子ではないってことは…お婿さん、とか?」
にこりと笑われて、顔が赤くなるのがわかった。
「あ、でも投薬してるってことはお嫁さんか。」
ははは、と笑う医者と、優しく微笑む看護師。
恋はますます恥ずかしくなって、顔を赤く染めた。
医者は何事もないかのように、サッと注射をした。
「適応検査の結果は悪くないようだけど…少し適応までに時間がかかるかもしれないね。よく様子を見ながら投薬していきましょう。」
「はい。ありがとうございます。」
「今回初投薬だよね?一応薬について説明しておきますね。別室で看護師が説明しますので、奥にどうぞ。」
医者にそう言われて、別の部屋に入る。
「こちらおかけになってください。」
指示された場所に腰掛け、出された紙を見る。
投薬後の流れや、副作用について書かれていた。
「投薬後、体質が徐々に変化していきます。赤津さんの場合は、男性ですから、こちらになります。」
紙を指されて、そこに目をやる。
「1ヶ月ほどで、肛門が女性の膣と同じように、分泌物が出るようになります。2ヶ月から3ヶ月ほどで、子宮の代わりになる器官ができます。その後、徐々に排卵が始まり、生理のような症状も、ほんの少しですが出ますので、様子を見てください。」
「はい。」
「副作用についてですが、人によって、吐き気がしたり、体がだるいと感じたりします。体が薬に慣れてくれば、それも治まってくると思いますが、もしもひどいようでしたら、投薬の際に医師にご相談ください。」
「わかりました。」
「男性にありがちな副作用として、精神的に不安定になったり、興奮したりすることがあります。ホルモンバランスの乱れによるものですので、病気ではありませんが、ご注意ください。これもひどいようでしたら医師にご相談ください。説明は以上です。何か心配なことはありますか?」
「いえ、大丈夫です。」
「それではお大事にどうぞ。」
「ありがとうございました。」
看護師に軽く頭を下げ、恋は病室を後にした。
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