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〜琉side〜
「ひゅう、木之本やるねぇ。」
翔也が出て行き、またガヤガヤとし始めた会場。
琉の隣で、山之内に聞こえないくらいの声で、佐藤がそう言った。
「木之本、奥さん溺愛だねぇ。」
「まあ…あいつはあの子に会うまでが荒れ放題だったんで…」
明希に出会う前の翔也のことが、よく今までスキャンダルにならなかったと思うほど、翔也の私生活はだらしなかった。
だらしない、というのは、夜の生活においてのみだが。
「相当惚れ込んじゃってるわけか。」
「明希、大丈夫でしょうか…」
恋が反対の隣で、心配そうにそう言う。
明希の顔色はものすごく悪かったし、フラフラとしていた。
「翔也がついてるし大丈夫だよ。心配すんな。」
「はい…」
「あとで家に寄ってみる?」
「…いいですか?」
「うん、いいよ。」
「…ひゅーぅ、見せつけてくれるねぇ。」
恋の頭を優しく撫でると、佐藤がニヤニヤとしながらそう言った。
途端に恋が顔を真っ赤にしてしまう。
「あなた、あまりからかうのはよしなさい。」
「あはは、すまんすまん。」
奥さんに睨まれ、佐藤は頭をかいた。
「…ところで…木之本、まずいんじゃない?」
「…えぇ…山之内さんにあれだけ言うと…」
山之内の、業界での権力や影響力は計り知れない。
山之内が使うなといえば、テレビ業界ではまず起用されなくなる。
「干される、ってこともありえなくないな。」
「ですね…」
「間違ったことは言ってねえと、俺は思うけどなぁ。」
佐藤は懐の広い男だ。
事務所は違うが、恋のことが問題に上がった時も、心配してくれていたりと、面倒見もいい。
「だってよ、俺は、ユイがもし男でも、結婚してたと思う。」
ユイ、は佐藤の妻の名前だ。
「好きな人に、男も女もねえよ。なぁ、赤津。」
「はい。」
琉はもともと、ゲイやバイではない。
だが、恋を好きになったのは事実だし、もし恋が女でも、恋していたと思う。
「…って山之内さんに言えるかって言われるとそれはな。木之本はその辺すげえよなぁ。」
佐藤は感心したようで、うんうん、と頷いた。
「でももしこれで、木之本が芸能界を干されるなんてことがあるなら、あんまりいい気はしねえな。」
佐藤はコソッとそう言う。
「そもそも、木之本の奥さんに、山之内さんから話しかけたんだぜ。最初から嫌味言うつもりだったんだろうな。」
「でも、なんでそんなこと…」
「お前、知らないのか?山之内さんは、娘さんの結婚相手に木之本を考えてたんだぜ。」
「…初耳です。」
「まあ、木之本はそんなこと知らねえだろうけど、業界では割と有名な話だぜ。」
翔也は顔も性格もいいから、妻の座を狙う女優がたくさんいたのは知っていたが、まさか山之内の娘までがその一員だったとは驚きだった。
「要は娘の相手にと惚れ込んでいた男が、どこぞの馬の骨ともわからんやつにとられた、なんて思ってるんだろうな。」
もっとも、明希はUHグループの社長子息で、跡を継ぐことはないものの、はっきりいえば御坊ちゃまだ。
「…あの、佐藤さんはこの前の週刊誌、読んだんですよね?」
「ん?あぁ、読んだよ。恋くんの話だろ?」
「その記事、きちんと読みました…?」
「いや?週刊誌なんてそんなに熱心に読まねえよ!」
あはは!と笑う佐藤に、バシバシと叩かれる。
あの週刊誌の文章には、明希がUHグループ社長の子息であることが載っていたはずだ。
佐藤がこの調子だと言うことは、山之内のような、週刊誌などは読まない人間は、明希がそんな立場だとは知らないのかもしれない。
(馬の骨…ねぇ…あんだけ言った相手が、数々のドラマのスポンサーにもなってるUHの息子だって知ったらどうすんだ、山之内さんは…)
琉はそんなことを思い、ため息をつく。
チラリと恋を見ると、恋は苦笑いだ。
「まあ、もしなんか俺にできることがあれば言えよ。」
佐藤はそう言うと、妻を連れ、また別の俳優の元に向かう。
「…明希がUHグループの関係者だと知ったら、どうなるんでしょうか?」
「山之内さんでも顔面蒼白かもな。」
琉は苦笑いしながらそう答える。
「まあでも…結構明希くんを傷つけてくれたんだし?もし翔也を干そうなんて思ってるなら、少しくらい痛い目見て貰えばいいんじゃない?」
そう言った琉は、山之内を今は自由にさせ、翔也を干そうがどうしようが黙っているつもりだった。
「琉さんって、怒ると怖いですよね…」
「ん?」
「いえ、なんでもないです。」
恋がポツリと何かを呟いたように思えたが、なんでもない、と言われ、それ以上は聞かなかった。
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