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〜明希side〜
「その…男同士だから…長続きしない、とか…」
「…とか?」
すでに翔也の声が、ワントーン下がった。
「子供は、って聞かれて、学生だし、不妊だしって説明したら…」
「「したら?」」
3人の声が見事に揃い、明希は視線をフラフラと彷徨わせる。
そして、困った表情を浮かべた顔を上げて、口を開いた。
「役立たず…って、言われちゃいました。」
それを聞いた瞬間、明利と翔也が顔を見合わせた。
「ほう、うちの息子に役立たずとは。」
「やっぱりあの場で殴っておくべきでした。すみません、お義父さん。」
「うん、今回は仕方ない。」
「はい…明希ちゃんの体調の方が心配だったもので。」
「それにしても…そんなことをよくも言えたな。いったい誰なんだい?そのお偉いさんは。」
「山之内さんです。」
「ほう、あの俳優か。」
2人の会話は、いたって優しい口調で、それも笑顔で進められているが、明希は怖いと思った。
「まさかそこまで言っているとは思わなくて…」
「そんなことを言っておきながら、翔也くんの仕事を奪っているのかい?信じられないな!」
明利の目が、笑っていない。
「次にその俳優と仕事をする機会はあるのかい?」
「いえ…おそらくないと思います。そもそも俺の仕事が、来週に一本だけしかなくて。」
「そこで、その山之内というのと、現場がかぶったりは?」
「あぁ…撮影現場は同じかもしれないです。スタジオが違うんですけど、山之内さんのレギュラー番組が、同じ時間に撮影があったはずです。」
「明利さん。」
ここまで、黙って聞いていた菜々子が、明利の名前を呼ぶ。
明希はもう、何も言えなくなっていた。
「私にいい考えがあります。手伝っていただけます?」
「もちろんだ。」
「翔也くんは、普通にしていてくれればいいわ。明希も、今回は私たちに任せて。」
「わかりました。」
「か、母さん…何する気なの?」
「心配しなくても、取って食ったりしませんよ。少し、驚かしてあげるだけ。」
ふふっ、と笑った菜々子は、心底楽しそうである。
「菜々子様、利希様がお呼びです。」
メイドが呼びに来て、菜々子は利希の元に向かう。
リビングには、3人が残された。
「…菜々子、あれは相当怒っていたな。」
「えっ、そうなの?ニコニコしてて楽しそうだったけど…」
明利のつぶやきに、明希は驚いてそう言う。
「菜々子は怒っても笑顔なんだよ…」
「お義母さんは敵に回してはいけませんね…」
「翔也くん、本当にその通りなんだ。」
「さっきまで、俺たちもカッとなってましたけど…お義母さんのあの雰囲気を見てたら、急に頭が冷えましたよ。」
翔也はそう言って苦笑いだ。
「菜々子はな、俺より敵に回したらいけないんだ。理由は簡単。俺は菜々子に逆らえない。」
明利の言葉通りなら、もしも明利が許したとしても、菜々子が許さなければ、その相手はUHからの圧力を受ける、ということである。
(…母さん強っ!)
「母は強し、とよく言ったものだよ。」
「でも、今回は心強い味方ですね。」
「まったくだ。」
ははは!と明利と翔也は楽しそうに笑っている。
明希は、自分の家族はすごいなぁ、と思っていた。
山之内は、こんな強い相手を敵に回してしまったのだが、それにまだ、気づいていないのだった。
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