アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
*236
-
〜翔也side〜
6月6日
今日は、翔也は、パーティーの時に会ったディレクターに頼まれて、番組に出演することになっていた。
「木之本、ありがとな!」
「いえいえ!いつもお世話になってますから。」
「今日はよろしく!」
「はい!」
久しぶりの仕事だが、やるべきことを全力でやるだけ。
そう思い、撮影に臨む。
テンポよく撮影は進み、時間通りに休憩になった。
「上原様?!」
「おぉ、悪いね、突然邪魔して。」
そこにやって来たのが、秘書と菜々子を連れた明利だった。
「今日は視察のご予定はありませんでしたが…」
「いやぁ、すまないね。今日は仕事じゃないんだよ。」
「はい?」
スタッフは不思議そうに首をかしげる。
翔也だけは、明利がなぜ、ここに来たのかを知っている。
「明利さん、いましたよ。」
「おぉ、翔也くん!」
「「え?」」
その場にいたほとんどの人が、驚いていた。
「どうも。わざわざ来てくれたんですか?」
「あぁ。仕事で近くを通ってね。菜々子が寄ろうと言うものだから。」
「あの…木之本さんと知り合いですか?」
近くにいたスタッフが、遠慮がちにそう尋ねる。
「ははは!知り合いも何も!婿だよ、婿。」
「婿ぉ?!」
翔也をキャスティングしたディレクターが、思わずそう声をあげた。
「てことは、木之本、この前来てたのって…」
「あぁ…明希はUHグループの長男なんです。」
翔也がニコリと笑ってそう言うと、現場にどよめきが起きる。
「まじか…」
「はは…隠してたつもりはないんですけどね。」
驚くディレクターに、翔也はそう言った。
「休憩は何分なんだ?」
「15分です。」
「その間、彼を借りても?」
「えぇ!どうぞ!!」
ディレクターが明利の願いを断るわけがない。
なにせUHは、テレビ業界では大事なスポンサーだ。
今回翔也がゲストとして出演するこの番組にも、UHはスポンサーになっている。
翔也は、他の出演者に挨拶をして、明利と菜々子と廊下に出た。
「山之内さんはまだ撮影かしら?」
「そろそろ一度休憩が入ると思いますけど…」
翔也がそう言った、ちょうどその時、スタジオの扉が開いて、山之内が出て来た。
「ほう、あれか。」
「明利さん、くれぐれも喧嘩はしないように。」
菜々子は明利にそう釘を刺す。
3人で、山之内が来る方に向かってまっすぐ歩く。
「上原様!おはようございます。」
「あぁおはよう。」
山之内についていたプロデューサーが、明利に気づいて、深くお辞儀をする。
「奥様まで…ありがとうございます。…と…木之本はどうしたんだ?」
不思議そうな顔をするプロデューサー。
そして、台本から顔を上げた山之内が、翔也を見ると顔をしかめた。
「あぁ、翔也くんは、私が連れだしたんだよ。」
「お知り合いでしたか?」
「あぁ…知り合い、というかな。」
プロデューサーがきょとん、としていると、山之内がプロデューサーに何かを尋ねている。
おそらく、明利が誰なのかということだろう。
コソコソと話がされ、山之内は明利がスポンサーの社長だと理解したらしい。
「木之本…スポンサーにまで取り入ってるのか?」
山之内は、嫌味ったらしく、翔也にそう言った。
「……おい、こいつはなんだ?」
明利が、わざとらしく不機嫌になる。
「えっ、あ、俳優の山之内です。」
プロデューサーが、慌てた様子でそう言う。
「山之内?…ほう…」
明利の反応に、山之内が怪訝な顔をする。
「翔也くん、この前のパーティーの主催者も、山之内という名前だったな?」
「…はい。」
「あのパーティーで、明希が体調を崩して帰って来たんだが?」
「…はい?」
話の流れがわからないのか、山之内は首をかしげる。
「翔也くんは、私の婿なんだよ。」
にっこりと微笑む明利に、山之内の顔が青ざめていく。
「先日のパーティーの後、明希が随分と落ち込んでいたんだが…山之内さん、あなたは何かご存知か?」
山之内は、顔面蒼白、というのがぴったりなくらい、顔色が悪くなった。
そして極め付けは、菜々子の一言だ。
「明希に何か、不妊について言った方がいると聞いておりますけれど…まさかあなたではありませんわよね?」
山之内は、完全に血の気が引いてしまっている。
(…これは…さすがにかわいそうだな…)
翔也がそう思ってしまうくらいは、2人の発するオーラが恐ろしい。
「主催者として…お詫び申し上げます…申し訳ありません。」
山之内は、そう言って深々と頭を下げる。
「…まあ、ご本人が1番、よく分かってらっしゃると思いますし、明利さん、これ以上は時間の無駄ですわ。」
「菜々子がそう言うなら…翔也くん、悪いね、貴重な休憩を付き合わせて。」
「いえ。」
「時間になってしまったから私たちは行くよ。また明希と家に来てくれ。」
「はい。また。」
明利と菜々子は、プロデューサーに見送られて帰って行く。
その場には、山之内と翔也が残された。
「…木之本…くん…」
「はい?」
「その…」
「あ、俺への謝罪なら聞きたくありません。社長子息だと知った途端に手のひら返し…そんなの本当の謝罪ではありませんし。」
「だがしかし…!」
「ご心配なく。これ以上、明希を傷つけないのなら、お義父さんには俺から言っておきます。」
「もちろん…!もう、何も言わないよ!君の仕事も、口出ししない。」
「そうですか。では。」
翔也はあくまで、山之内を許す気はない。
これ以上話すことはなかった。
「き、木之本くん!」
「…まだ何か?」
「その…私は…」
「…俺は別に、山之内さんに芸能界からいなくなって欲しいわけではないので。ただ…もうあなたとは関わりたくありません。」
翔也はそう言うと、スタジオに戻った。
その数日後、翔也が共演NGとして、山之内の名前を出したことに業界がざわついた。
さらには山之内自身が、翔也は悪くない、と言ったことで、さらに業界が震撼したのを、ただ1人、琉だけは笑いを堪えるのに必死だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
439 / 832