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〜恋side〜
6月23日
「母さん、恋の準備は?」
「もう少しで終わるわよ。受付の方はどう?」
「大丈夫!」
慌ただしく走り回る明希たち。
今日は琉と恋の結婚式で、花嫁である恋は菜々子やスタッフとともに控え室にいた。
「あの…俺も何かした方が…」
「やだ、恋くんは花嫁なんだから、式が始まるまで外に出たらダメよ。」
琉や琉の両親は挨拶に出ていて、恋の両親がいない代わりに、明利と菜々子が新夫側の挨拶や準備を担当してくれていた。
受付には明希と千秋と傑が入ってくれている。
「でも…じっとしてるのも緊張しちゃって…」
「大丈夫。全部滞りなく進んでるから。恋くんは心配しなくて平気よ。なんなら明希たち呼んできましょうか?」
「…いいですか?」
「えぇ、少し待っててね。」
菜々子はニコリと笑って、控え室を出て行く。
目の前にある鏡に映る自分は、自分ではないようで、不思議な気持ちになる。
花のカチューシャで留めているベールや、手に持っているブーケが、花嫁であることを象徴していて、ドキドキした。
「恋、入るよ。」
千秋の声が聞こえて、振り返る。
「おぉ、綺麗じゃん。」
「恋、すごく似合ってる。」
傑と千秋が微笑んでそう言う。
「あれ…明希は?」
「あー、あいつな。挨拶が覚えられない!って半泣きだったよ。」
傑がクスクスと笑いながらそう言った。
「ったく、新郎新夫より慌ただしいよな、あいつ。」
「翔也さんが仕事で遅れてくるって言ってたから、それで落ち着かないのかも。」
千秋もクスクスと笑っていて、明希が慌てている姿は、恋にも想像できた。
「そういや、ブーケトスとかやんの?」
「うん。やるよ。」
「千秋取れよ。」
「えっ、なんで僕?!」
「は?次の結婚はどう考えても千秋たちだろ。」
「えっ、そうなの?」
「え、違うの?」
傑と千秋の会話に、恋は思わず笑う。
「…よし、やっと笑ったな。」
「えっ?」
「恋、すごく困った顔してたよ?菜々子さんに、緊張ほぐしてあげてー、って言われたけど、まさかそんな顔してると思わなかったよ。」
「全くだよ。新夫なんだから、やっぱ笑顔じゃないとな。」
傑にぽん、と肩を叩かれて、自然と肩の力が抜けた。
「ま、もう赤津恋なわけだし、そんなに緊張することないだろ。」
「結婚式は別だっつの。」
それからしばらく、傑と千秋と話をしていると、恋の気持ちも落ち着いて、緊張もほぐれてきた。
「あ、傑、そろそろ行かないと。」
「あ、ほんとだ。じゃあまたな。」
「うん、ありがとう。」
2人を見送って、程なくするとスタッフから声がかかり、ベールを前にかけて、入場の場所に向かう。
恋のベールを持つのは利希の役目になっていた。
「れんおにいちゃんきれいだね!」
「ありがとう。」
「…なんだか、明希の時も緊張したが、今も緊張するな…」
明利が一緒にヴァージンロードを歩いてくれることになっていて、なぜか恋より緊張している。
「よろしくお願いします。」
「あぁ…よし、大丈夫だ。」
ふぅ、と息を吐いた明利に腕を差し出され、そっと腕を取る。
式場のドアが開いて、音楽に合わせて入場する。
式場内を見回せば、明希、千秋、傑、翔也、紘、それからわざわざ帰国してくれた小雪の姿も目に入る。
零や遥、浩也、瑞貴、貴也、奏、煌がニコニコとこちらを見ていた。
ひらひらと手を振る男がいると思えば、つい先日会った佐藤で、笑ってしまいそうになる。
他にも琉の俳優仲間や、恋の仕事仲間も数人顔を出してくれている。
式場の端には、この前世話になった、潤哉と鈴の姿もあった。
最前列には、隆文と眞弓、そして恋の親代わりを務めてくれている菜々子。明利と利希の分の席もある。
そして、琉が微笑んで立っている。
「…すごく綺麗だよ。」
琉の手を取り、ついに結婚式が始まった。
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