アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
*257
-
〜千秋side〜
7月2日
「あーづーいー…」
すっかり気温が上がってしまい、早くも夏の予感のする今日。
楓が千秋の隣でくでぇっと机に突っ伏してそう言った。
「机冷たぁぁい…超気持ちいぃ…」
「あはは、なんか楓がアザラシみたい。」
「なんでアザラシ?!」
「んー、なんか前に水族館に行った時、地面にそうやって転がってたから。」
クスクスと笑う千秋に、楓はもう、と怒る。
そんな2人に熱い視線を送る、同じ講義を取る生徒たち。
男子と女子も関係なく、千秋と楓に好意をもつ人間は多かった。
それもそのはず。
2人ともフワフワとした雰囲気でありながら、成績は優秀、さらに自分で弁当を作ってくる女子のような能力の高さ、そして誰にでもその優しさを向けるのだ。
だが、千秋は指輪をしているので、すぐに彼氏がいることがバレた。
よって視線のほとんどは、楓に向けられている。
2人を守る親衛隊などというものもこの専門学校には存在するらしく、彼らの視線も中には含まれている。
さらに視線の一部には、腐女子、腐男子と呼ばれるくくりの人間も含まれている。
千秋が攻め派か楓が攻め派か、常に戦闘が繰り広げられているらしいことも、この学校のもっぱらの噂だ。
もっとも、本人たちはそれには全く気づかないほど天然であるのだが。
「はぁぁ…アイス食べたい。」
「それはわかるなぁ。」
「買いに行く?」
「まだ講義残ってるし…帰りにでも食べて帰ろう?」
「やった!」
アイスが食べられるとわかると、途端に元気になる楓。
千秋はそれを見てクスクスと笑う。
「いっつも休みの日は千秋と出かけられないからなぁ。僕楽しみ!」
「あはは…ごめんね。」
「彼氏とイチャイチャしてんでしょー?あー!羨ましい!」
楓さんは彼氏が欲しいらしい。キタコレ。
残念、彼女ならなれるのに!
私女だけど楓さんなら抱きたい。
そんな声が聞こえるような、聞こえないような、ざわつく教室。
だが千秋と楓は全く気にしていない。
「そんなことないって…」
「あーでも、友達とも家近いんだっけ?」
「うん。」
「千秋の友達会ってみたいなー!」
「今度会う?」
「いいの?!」
「いいよ。」
「やった!!」
楓は嬉しそうに、ふんふんと鼻歌を歌いながら次の講義の教材を取り出す。
周りには花でも舞っていそうだと、千秋ですら思った。
「あっ、そうだ。」
そんな楓が、突然真剣な顔をして千秋の方を向いた。
「千秋にね、話しておきたいことがあるの。」
「ん?なに?」
「…ここでは言えない。今日の放課後でもいい?」
「うん。いいけど…大事な話?」
「…うん。」
こんなに真剣な顔の楓は見たことがなくて、千秋もなんとなく力が入る。
「千秋になら、話してもいいかなって、思ったこと。」
「わかった。聞くだけしかできないかもしれないけど、僕でよければいくらでも。」
「ありがとう!千秋ならそう言ってくれると思ったー!」
むぎゅっ、と抱きついてくる楓を、よしよし、と撫でながらクスリと笑う。
楓が切り出してくる話が、まさかあんなことだとは、この時の千秋は思いもしなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
461 / 832