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〜千秋side〜
「ふぁぁー、うんまっ!」
「んー、夏のアイスは美味しいね。」
千秋と楓は、専門学校の近くのカフェに入り、アイスを食べていた。
「はー、生き返る…」
幸せそうな顔をしている楓に、千秋は微笑む。
「あっ、そうだ、あまりに幸せで忘れるとこだった!」
「ん?」
「千秋にする話!」
「あ、そういえばそうだったね。」
アイスに気を取られてすっかり忘れていたが、話をしたいと言われていた。
それもおそらく、かなり重要な話だと思われた。
「あの、すごく突然な話で申し訳ないんだけど、聞いてくれる?」
「うん。」
迷いなく頷くと、楓は安心したようだった。
「千秋は、烏沢財閥って知ってる?」
真剣な表情でそう尋ねられて、ドキリとする。
烏沢グループは今も残っているが、烏沢財閥は俊蔵が逮捕された時に解体になった。
つまり、わざわざ財閥の名を出したということは、その、俊蔵がいた頃の烏沢を知っているかということだった。
「えっと、ニュースで…見たくらい、かな…」
なんとなく本当のことは言えなくて、千秋はそう言った。
「まあ…そうだよね…普通の人はそうだもんね。」
「うん…ごめんね…」
「ううん、それはいいんだ。それじゃ、烏沢財閥がどんな不正をしてたかも、あまり知らない?」
本当は、俊蔵を調べていた時にほとんどの悪事を知ったし、自分の両親も俊蔵に殺されたのだから、知らないはずがない。
だが、楓の言葉に頷く。
「ニュースで取り上げられた、事故の話は知ってる?」
「うん…事故に見せかけた殺人だったとか…一昨年の事故も仕組まれてたんだっけ…?」
「そうそれそれ。」
それは自分の友人である恋の話なのだが、そんなことを言えるはずもなく、曖昧にごまかした。
「あとは…うーん、あげ始めるとキリがない…少年の虐待、監禁を手助けしてたとか、他国の侵略を狙ってたとか、もっと昔だと放火事件とか…」
その全てに、覚えがある。
放火事件は千秋の両親の話で、他国の侵略とはローデンスの話だろう。
少年の監禁の話も、2030年の恋の事故がある少し前に、問題になっていたはずだった。この話については、千秋はあまり詳しくないが。
「麻薬密売とか、暴力団の手助けとか…」
それも紘が調べをつけていたから知っている。
「とにかく、たくさんの悪事を繰り返してきたわけ。」
「そうなんだ…」
「それで…僕…烏沢財閥のせいで、家族を失ったんだ…」
その言葉に、千秋は驚きを隠せなかった。
望月という名前を、聞いたことがあったことを思い出したからだ。
まさかそれが、楓の家族なのだろうか。
「僕の家族は、両親と、妹が1人。裕福じゃなかったけど、幸せだった。」
千秋は、自身の家族のことを思い出した。
「でも、ある日、僕の両親と妹が、烏沢が麻薬の取引をしているところを見てしまったみたいで…」
千秋の心臓が、ドクドクとなる。
確か俊蔵が、望月一家を始末しておけと、下っ端に命じていた。
それは確かに、麻薬取引の後だったようだし、俊蔵を調べていた時に出てきた事件だった。
そしてその一家の死因はー。
「僕が学校から帰ってきた時には、家が燃えてた。」
そう、千秋の両親と同じ、焼死だった。
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