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〜恋side〜
「うわ…」
カフェを出るとそこは人でいっぱいだった。
どうやら先ほど試合に出ていた選手たちがそこにいるらしい。
「マモル様、今日も素敵でした!」
「ジン様こっち向いてー!」
「マサくん素敵ー!!」
女子たちの黄色い声援が飛び交い、その中心に選手たちがチラリと見えた。
「あっ、奏さんもいる!」
恋と貴也はなんとか人の間を縫って、声が届く距離に来た。
「奏さっ…」
貴也が奏を呼ぼうとしたその時、ドンッ、と女が貴也にぶつかってきた。
「邪魔よ!子供はあっち行ってなさい!!」
キッ、と鋭い視線をよこした女。
貴也を受け止めた恋は、冷たい視線を返した。
「…なにか?」
恋と目があった女の表情が、少しだけ和らぐ。
恋もイケメンの類で、身長も低くはない。
(顔がよけりゃ誰でもいいんじゃん…)
「ぶつかったら謝るのが筋ですよね?それを邪魔って…」
「…その子がここにいるからよ。ここはファンクラブの人たちと、選手の家族しかいられないのよ。」
ここ、と女が指差す場所は、どうやらこの集団の最前線。
そもそも恋は奏の義兄であるため、ここにいられるということがわかった。
「…俺は選手の家族なんで。この子は俺の付き添いです。それを突き飛ばしておいて謝罪なしですか?」
恋は冷ややかな声でそう言った。
女が黙ったその時。
「貴也くん?!」
まだしゃがみ込んでいた貴也を見つけた奏が、慌てて寄ってきた。
「そ、奏さん…」
「…恋さん、貴也くん借りる。」
「えっ、いいけど…怪我してるかも…」
そう言うと、奏はぴくっと反応して、今までにないくらい冷たい表情で振り返った。
「…なんで?」
今そこの女が突き飛ばした、とは言えず、女にチラリと視線をやる。
「…何かしたの?」
奏は女に向かってそう聞く。
その顔に笑顔はなく、かなり不機嫌だった。
こういうあたり、やはり琉の弟だと思う。
「わ、私は何もっ…」
奏がここにいるために、周りからかなり注目を集めていて、恋と貴也は顔を見合わせて、困り果てる。
「恋義兄さん、ごめんね、なんか。貴也くんも大丈夫?とりあえず一緒に行こ?」
黙っている女に痺れを切らした奏は、わざとらしく恋のことを義兄さんと呼び、貴也に微笑みかけた。
当然周りはざわついているが、奏はそれを気にすることなく、高谷の腕を取る。
「先輩すみません。ちょっと抜けてもいいですか?」
「おーいいぞ!家族か?可愛いな!」
ワシャワシャと貴也の頭を撫でる男に、奏が若干嫉妬の色を浮かべているのを、恋は見逃さなかった。
(独占欲強いな…)
そんなことを思いながら苦笑いする。
「失礼します。」
サッと集団から抜け、奏と貴也がいなくなる。
恋も集団から抜け出したが、2人の姿は見失ってしまった。
「…えっ、待って、これ、俺はどうしたらいいの?」
思わず1人でそう呟いてしまう。
待つか待たないか迷って、恋は結局、貴也を待つことにした。
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