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〜恋side〜
「…今回は、俺が強請ったので強く言えませんけれども…」
ベットに横になりながら、恋はジトッと琉を睨む。
つい先ほど、奏と貴也は帰宅し、明希も翔也におんぶされて帰っていった。
すでに日は落ちている。
「…隣にいるってわかってて、あんなにしなくても…」
恥ずかしくて、ゴニョゴニョと語尾を濁す。
「ごめん…」
床にあぐらをかき、恋の方をチラ、と見た琉は素直に謝った。
「…恥ずかしいじゃないですか…」
ウサギとハチミツ好きのクマのぬいぐるみが、ドアのところからベットに連れてこられ、恋の腕の中にいる。
それを手でいじくりまわしながら、恋は顔を真っ赤にしている。
「…恋が誘ってくれたから嬉しくて、つい…」
明希たちがいることをすっかり忘れて、あんな風に誘ってしまった恋にも非があるのはわかっている。
けれど、やっぱり途中からは琉が意地悪をしてきたのだから、その点は反省してほしい。
「…それに…誕生日だから…ディナーに連れてってくれるって…言ってたのに…」
そして恋が拗ねているもう一つの理由がこれだ。
足腰が痛くて出かけるどころではなく、せっかく楽しみにしていたディナーデートは、諦めるしかなさそうなのだ。
「ん?何か言った…?」
「なんでもないです。」
プイッ、と琉の反対側を向き、ぬいぐるみをぎゅっと抱く。
忙しい琉と2人きりで出かけられることはそうそう無い。
誕生日だから、ディナーにくらいは連れていきたい、と言ってくれたのはものすごく嬉しかったのだ。
だから、抱くのはもう少し加減して、せめてディナーデートをしてから、理性を飛ばして欲しかった。
琉との子供が欲しい今、琉とエッチをすることももちろん嬉しいが、デートには行きたかった。
(…考えてたら悲しくなってきた…)
ジワ、と涙が出てきて、ぬいぐるみに顔を埋める。
楽しみにしていた遠足に、風邪を引いて行けなくなった子供の気分だ。
「恋…ごめん…そんなに嫌だったとは思わなくて…」
恋はなにも言えない。
今何かを言ったら、声が震えてしまいそうだ。
「……ちょっと、出かけてくるな?」
「え…」
恋が何か言う前に、琉は部屋から出て行ってしまう。
一体どこに行くというのだろう。
「…どこ、行くんだし…」
ウサギを持ち上げて、ウサギに話しかける。
「今からお前、琉さんな。」
くりくりっ、とした大きな瞳が、じっと恋を見つめる。
「…俺は、琉さんとデートに行きたかったんです。え、エッチするのが嫌なんじゃない…聞かれてたのだって、明希と翔也さんだから…もう何度も聞かれてる気がするし、恥ずかしいけど、それで拗ねるほど嫌じゃないんですよ…」
1人だと思ったら、ポロポロと本音が溢れてくる。
「…腰痛くても…歩けるくらいなら…別に、よかった、のに…デート…したかったっ…のにぃ…」
ポカッ、とウサギを叩く。
当然返事も反応もあるわけがない。
「ばか、ばかぁ…」
それからずっと、ウサギを叩いたり、むにゅっと潰したりしながら、琉さんバカ、と、デート行きたい、を繰り返し言っていた。
「…あのー…」
すると突然、声をかけられる。
「…えっ…」
「…もう、ウサギの俺を叩くの…気が済んだ、かな?」
一体いつ入ってきたのか、琉がコンビニの袋を手に、部屋の入り口で固まっている。
「えっ…え…も、もしかして…ぜんぶ…」
「…はい…聞いてました。」
少し泣いていたせいで、鼻はスンスンとなるし、目元は若干濡れている。
それも、言っていたことを全て聞かれたなんて。
「…デート、行きたかったから拗ねてたの?」
「…っ…だって…なかなか、行けないから…楽しみだったんです…」
「…もう、可愛い。」
ぎゅっと抱きしめられて、琉の匂いが鼻腔を掠める。
「本当に嫌だったのかと思った。加減、すればよかったな。」
腰を優しくさすられてそう言われると、それだけで許してしまえる。
「今度絶対ディナーデート連れてくから…今日はこれで、我慢してくれない?」
体を離した琉は、コンビニの袋を掲げる。
恋がきょとん、としていると、琉が中身を見せてくれた。
「わっ…すごい…」
プリンにイチゴのショートケーキ、ティラミス、コーヒーゼリー、シュークリーム。
とにかくコンビニスイーツだらけだった。
「今日、全部ちょっとずつ食べてもいいし、結構日持ちするやつもあるから、毎日一個ずつ食べてもいいし…」
「これ、買いに行ったんですか…?」
「うん。出先でケーキ、あげようと思って何も買ってないからさ。ふと思いついて。」
嬉しくて、頬が緩むのがわかる。
「全部…俺の?」
「もちろん。アイスも買ってきた。それはさすがに冷凍庫入れてきたけどな。」
「アイスも…?」
「うん。抹茶のアイスと…なんだったかな、期間限定のチョコのアイス?あとクッキークリームと…っうわ!」
琉にぎゅっと抱きついて、顔をぐりぐりと擦り付ける。
「…ん?どうした?」
「…嬉しい、です…」
「ん、誕生日おめでとう。」
「…ありがとうございます…」
「プレゼントはきちんと用意してあるから!」
「…琉さんがいるなら…いらない…」
「…またそうやって煽る。」
琉はそう言うが、手は優しく頭を撫でてくれていて、嬉しくてニヤついてしまった。
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