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〜千秋side〜
7月18日
「海?」
「そうそう!行きたいなーって!でもさ、2人で行っても面白くないし、いろんな人誘お?」
「…うん、まあ…いいけど…」
来週から夏休み、という頃、楓から海に行こう、という誘いがあった。
海に行くとなれば、背中の痕を隠さなくてはならないし、あまり気は進まない。
「それでね、千秋の友達の、恋くんたちも誘って欲しいんだけど…」
「えっと…それは大丈夫だけど…他には誰を誘うの?」
「それはね、決めてない…というか、恋くんたち来てくれるならそれだけでいいかなぁって思ってる。」
一緒に行くのが、恋たちや楓なら、海もいいか、と千秋は思った。
「わかった、誘っておくね。」
「ありがと!!彼氏連れて来てもいいぞー?」
「連れてかないよー、もう。」
ニヤニヤと笑う楓に、千秋は困ったように笑い返す。
「千秋の彼氏、どんな人?結局この前も聞けなかった!」
「どんな人、か…」
「年上?年下?同い年?」
「年上、だよ。」
ある程度なら、答えても問題ないだろうと思った。
「お仕事は?」
「社長さん…かな。」
「えっ?!まじか!!すごいなぁ。かっこいい?」
「まあ、イケメンって言われる部類かな?」
「おぉー!なんて呼んでるの?!」
「名前で…」
「いいなぁ。千秋の恋人だから、きっと優しいんだろうなぁ。」
それは間違っていないけれど、きっと楓が想像しているような人ではない。
楓が憎んで、嫌っている相手なのだから。
「仲良い?」
「うん…と…今は、ちょっと…」
「えぇ?!喧嘩?!」
「喧嘩、じゃないんだけど…」
先日、紘のことを無視してしまってから、紘に避けられている。
仕事が忙しいのもあるのだろうが、家でも顔を合わせることが少なくなった。
寝るときも時間が合わないし、食事の時も無言。
やはり、無視してしまったのが悪かったのだろう。
「ちょっと、避けられてるっていうか…」
「そうなんだ…早く仲直りしなよ?すれ違いって、大きくなると取り返しがつかなくなるよ?」
「わかってるけど…」
紘に謝ろうにも、話しかければ、仕事が忙しいから後で、と言われ、会話のチャンスもない。
すでに、すれ違いは大きくなりすぎているように思う。
「…まあ、そんな暗い顔しないで!海楽しんでさ、パーっとやろうよ!ね?」
楓は気を遣って慰めてくれるけれど、千秋の気分は晴れない。
楓にも、謝るべきことがあるからだ。
紘のことと、楓のことが頭の中でごちゃごちゃになっていく。
どうしたらうまくいくのか、傷つけずに済むのか、千秋にはわからなかった。
そして、周りを考えている千秋自身が、1番傷ついていることを、本人がわかるはずもなかった。
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