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〜傑side〜
かき氷を食べ終わった頃、背中に鋭い視線を感じて、傑は振り返った。
「げ。」
「なに、どうした?」
隣にいた恋が、不思議そうにそう言う。
「いや、なんでもない。」
傑は、ぎこちない動きで視線を元に戻す。
鋭い視線の発信源は、翔也だった。
それもなにやら、かなり怒っているようだった。
距離は割と離れているのに、なぜか感じられるオーラに、傑は本能的にやばいと思った。
けれど、翔也がなぜ怒っているのかはよくわからない。
とりあえず今は、他の4人に手出しをさせないようにするしか、翔也のご機嫌をとる方法はない、と傑は確信した。
そんな矢先だった。
「ねぇねぇ、君たち。」
(最悪だ。)
傑はげんなりした。
聞こえてきた声はチャラいというかなんというか、いかにもナンパです、といった感じ。
「俺たちと一緒に遊ばない?あっちの方に他にもいるからさぁ。」
ニヤニヤと話しかけてくる男2人。
「ダメダメ!ここのみんな彼氏いるから!」
そう言ったのは楓。
けれど、ナンパの男たちは、これでは引いてくれなかった。
「でも彼氏今ここにいないんでしょー?こーんな可愛い子たちを放置してるなんて、ひどい彼氏だねー?」
「ひどいっつか、無防備だよね?俺たちなら放っておかないよ。」
傑は心の中で、いや、後ろにいます、と呟く。
翔也がいたということは、おそらく琉と紘もいるだろう。
きっと、友達同士で楽しませてあげたいけれど、放っておくのは心配、とでも思っているのだ。
「放置なんて、されてません。」
恋が冷たい声で言い返す。
「ひゅう、美人!」
男はそんなことを言い、恋の方にぐいっと近づく。
恋の纏うオーラが、急に冷えた気がしたのは、傑の気のせいだろうか。
「ね、みんなで遊んだら楽しいって、ね?」
ポン、と千秋の頭に手を置いたもう1人の男。
その瞬間、楓の顔色が変わる。
(え?)
けれど楓は、千秋を見ているのではなくて、傑の後ろに、釘付けになっていた。
「…紘、さん…?」
千秋の唇が、言葉を紡ぐ。
明希も恋も振り返って、驚きの表情を浮かべた。
「ごめんね?もうちょっと我慢しようと思ったんだけど、紘さんが動き出しちゃってさ。」
翔也はそう言って苦笑いを浮かべる。
「気安く千秋に触るな。」
紘は相当怒っているのか、いつもより低い声でそう言う。
「マジで彼氏いたのか…すいませんでしたー。」
男たちはそそくさと立ち去っていく。
「傑くん、旅行の時また突っ走ったんだって?誰からのお仕置きならちゃんと聞けるのかなぁ?」
「す、すいません…」
ニコニコ笑う翔也が怖い。
けれど、それより傑が気になるのは、千秋と楓の雰囲気だった。
「…騙したの?」
周りは賑やかなのに、なぜかものすごく、静かに感じられる。
この辺りだけ、時が止まってしまったみたいに、楓の声だけが、空気を震わせる。
「千秋は、烏沢紘と、知り合い?知り合いどころか…彼氏、なんだね?」
楓の言葉に、千秋はなにも言えず、俯いている。
傑を含めた他の全員は、状況すらわからなかった。
「僕の話、どんな気持ちで聞いてたの?バカだなって思った?」
「ちがっ…」
「千秋なら、わかってくれると思ってた。」
その場の空気が、どんどん重くなっていく。
「千秋は本当は、烏沢の味方で…僕の仇も同然だったんだ!嘘ついて楽しかった?!僕の気持ちなんか、千秋にわかるわけがなかった!!」
楓はそう叫ぶと、走り出してしまう。
千秋は俯いて、追いかけることもしないし、明希と恋はワタワタとしている。
(ったく…仕方ねえな…)
「恋、あと任せたから。」
「は?!」
この場で冷静になれるであろう恋に一言そう言うと、傑は楓を追いかけた。
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