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〜翔也side〜
「寝ちゃった。」
クスクスと笑いながら、翔也は明希の頭を撫でた。
そっと髪を梳くように撫でていると、明希がふにゃりと笑う。
「ふふっ…可愛い。」
むに、と頬をつまむ。
「うにゅ…」
よくわからない声を漏らし、明希が寝返りをうつ。
先日の病院の検査の結果、翔也自身には不妊治療は必要ないということがわかった。
明希はそれにものすごく安心していた。
けれど翔也は、明希が別室でエコーを撮っている間、産科医から聞かされた話が気になっていた。
「…ストレス、ねぇ…」
医者の話によれば、薬の適応にもっと時間がかかると思っていたのだが、明希の体はすでに薬に適応しているという。
器官も出来始めていて、このままうまくいけば、来月には妊娠できる体にはなるという。
2年かかるはずだったのが半年ほどで済んだのだから、それは良かった。
他人より遅いのは間違いないし、薬が馴染みにくい体なのも間違いない。
ただ、ストレスによる妊娠の遅れ、というのも懸念しているのだそうだ。
明希の場合、家族と長い間確執があったことが、妊娠への不安を生み出してしまっているのではないか、というのが、医者の見解だった。
「しょうやさん…」
「ここにいるよ。」
寝言を言う明希の手を握ってやると、またふにゃりと笑う。
こうしていると、もう不安はないように思える。
実際、明希はもう、過去を引きずっているわけではない。
けれど、無意識のうちに、家庭を作ること自体に、不安があるのかもしれない。
「…俺、もっと頼れる男になるからね。」
体の問題もあるので、そちらの不妊治療はこのまま続けていくらしい。
精神面は、翔也が寄り添うことが大事だと、医者は言っていた。
「大丈夫だからね。」
明希の頬にそっとキスをして、自分もベットに入る。
そうすると、明希がスリスリと寄ってきた。
「離れないよ。俺は、ずーっと、明希ちゃんと一緒にいるからね。」
そう言って抱きしめる。
「ん…あれ、俺、寝てた…」
「ごめん、起こしちゃった?寝ていいよ。」
「起きます…あの、話したいこと、あったから…」
「ん?なに?」
目をこすって、しっかりと起きた明希。
何か大事な話がしたいのだろう。
「あの…俺…」
「うん。」
「不妊、なのって…精神的に、ダメ、なんですよね…?」
医者との話を聞いていたのか、持ち帰った資料を見てしまったのか。
明希は自分の状態をわかっていたようだ。
「…ダメってことはないよ。明希ちゃんが不安になってるってだけで…それは仕方のないことだよ。」
「…体も、ダメだって…」
「…ダメなんじゃないよ。ちょっと、器官ができるのに時間がかかるだけだよ。」
「翔也さん…俺、家族、作りたい…でも、どっかで、怖いって、思ってる…」
「…うん。」
ぎゅっと抱きついてくる明希の背中を優しくさすって、話を聞く。
「…また、父さんと、うまくいかなくなったり…俺と、翔也さんが、うまくいかなくなったり…それが、怖い…」
今まで言ってくれなかったことだった。
きっと、言うのも怖かったのだろう。
「…そっか。」
「…怒らない…?」
「どうして怒るの?」
「だって、これって…俺、翔也さんのこと、信用してないみたい、で…」
「そんなことないよ。言ってくれて嬉しい。でもね、明希ちゃんの不安は、現実にはならないよ。俺はなにがあっても明希ちゃんとずっと一緒にいたいし、お義父さんだって、もう明希ちゃんを手放したりしないよ。」
「…ほんとに…?」
「うん。」
「…俺、恋見てると、いいなぁ、って、思う…琉さんのこと、恋は信用してるし…避妊もしてないって、言ってた…俺も、そうしたい、のに…」
今日はみんなで集まったから、余計に心配になってしまったのかもしれないと思った。
「大丈夫だよ。明希ちゃんは明希ちゃんなんだから。俺と2人でゆっくりやってこ?避妊、明希ちゃんがしたくないなら、これからはしないでエッチしよっか?」
「…いいの…?」
「うん。まだ明希ちゃんの体には器官ができてないから、妊娠には至らないと思うけど…明希ちゃんがそうしたいならそうしよう。」
「…うん。」
「もう心配なことないー?」
「…うん。」
「よーし!」
「うひゃ、くすぐったい!翔也さん、それくすぐったいよ、あはは!あははははっ!」
明希の脇をくすぐると、身をよじってケラケラと笑う。
先ほどのような、暗い顔ではなくて安心する。
「あははっ、もう、だめー!」
ぎゅうっと抱きつかれて、動けなくなる。
「あ、もう、動けないじゃん。」
「えへへ…翔也さん、捕まえた!もう俺のもの!」
「なに言ってんの、ずっと前から、俺は明希ちゃんのものでしょー。」
「ふふっ、嬉しい。えへ、なんか、悩んでたのバカみたいに思えてきました!」
「あとは体の治療に専念するんだよ?でも無理はしたらダメね。辛くなったらすぐ言って?」
「はい。翔也さんがいるなら、なんでも頑張れます!」
明希がそう言ってくれると、本当に嬉しい。
不安も取り除けたようで何よりだ。
何より、だが。
あまり可愛いことばかり言われると、翔也の理性もなくなる。
不妊治療をしている以上、当然我慢するべきところはあるわけで。
この先、それだけが心配な、翔也だった。
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