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〜恋side〜
11月4日
「いたっ…」
下腹部にチリッとした痛みがあり、うずくまる。
妊娠14週目で、安定期には入ったものの、不安が募る。
今は小雪も琉も仕事に行っていて、家に1人だ。
千秋や楓、明希も学校でいない。
1人でぐるぐると考えていると、悪いことばかり考えてしまう。
「いっ…」
その間にも、腹痛はひどくなっていくように思う。
恋はゆっくりと動いて、スマホを取り、琉の実家に電話をかけた。
『はい、赤津です。』
「おか、さん…っ…」
『恋くん?!どうしたの?!』
「おなか、いたいっ…いたいっ…」
『ちょっと待ってて、今すぐいくから。すぐに病院行きましょう。できるだけ動かないで、安静にしてて。わかった?』
「は、いっ…」
ソファに座って、深呼吸をしていると、少し痛みが落ち着いてきた。
どのくらい経ったか、インターフォンの音が聞こえる。
ゆっくりと立ち上がり、玄関に出る。
「ここで少し待ってて。コートは上よね?」
「はい…」
眞弓が来てくれた途端、安心して涙が出そうになる。
眞弓はコートとマフラー、ブランケットを持って戻って来た。
「大丈夫よ。心配しないで。大丈夫。」
そう言われて、背中をさすられる。
ゆっくり歩いて、近くでタクシーを拾い、産科に向かった。
「大丈夫よ。まだ痛い?」
「はい…っ…」
落ち着いていた痛みが、またぶり返してくる。
「いっ…」
「痛い…?」
コク、と頷くと、眞弓が手を握ってくれる。
赤ちゃんに何かあったらどうしよう、という思いで頭がいっぱいで、不安でたまらない。
病院について、受付に事情を説明したら、平日の昼間で空いていたのもあったのか、すぐに須賀のところに通してくれた。
「どうしました?」
「おなか、痛くてっ…」
「ちょっと服脱がせますね。」
ベットに横にさせられ、診察される。
「心音は問題ないけど…出血してるな…このまま入院しましょう。お母様ですか?」
「はい。義母です。」
「おそらく切迫流産です。絶対安静で入院していただきますので、他のご家族の方にもご連絡を。」
わけがわからないまま病棟に運ばれる。
流産、という単語に不安感が募った。
「赤津さん、大丈夫ですよ。心配しないでくださいね。」
須賀に声をかけられ、病室に入れられる。
「あのっ…赤ちゃん…っ…」
「心音は特に異常ありませんでしたので、このまま妊娠継続できると思います。切迫流産というのは、流産する一歩手前、ということで、まだ流産ではありません。」
そう言われてひとまずホッと息をつく。
「ただ、思ったより出血が多いので、絶対安静で、入院してもらいます。トイレと食事以外では基本横になっていてください。入浴は体力を使うので、清拭といって、体を拭くことに留めます。退院の時期は様子を見て判断しますが、今のところは、安静にしていれば大きな問題はありません。」
「なにか…悪いことをしてしまったんでしょうか…」
「初めての妊娠で、かつ男性にはもともとない器官を作って使っていますから、家事などの小さな運動も応えたのかもしれません…申し訳ありません。私のミスです。」
家事などの運動は、一般的には問題ない。
遥は家事をやっていたと言っていたし、散歩もしていたらしい。
須賀が悪いとは思えなかった。
「いえっ…俺が無理しすぎちゃったんですよね…きっと…」
「自分を責めないでください。ストレスも赤ちゃんに良くありません。人によって、家事もできない人も、プールでの運動なんかをできる人もいます。男性の妊娠は、特に個人差が出やすいので、ご自分での判断は難しいと思います。私が赤津さんの体質を見誤りました。」
申し訳ない、と深々と頭を下げられる。
「いえっ!あの…これから、よろしくお願いします…」
「はい。とにかく今は絶対安静で、退院できても、家事は最低限に留めるようにしましょう。自分を責めずに、ゆっくり休むことに集中してください。不安なことがあれば、すぐになんでも言ってください。」
「はい…ありがとうございます。」
須賀と入れ違いで眞弓が入ってきて、眞弓はそばで、ずっと手を握ってくれていた。
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