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二度目の訪問
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三日前に訪れた場所。そして俺に壮絶な思い出を残させた場所。ここに訪れることはもうないと、自分は勝手に思っていた。そして再びこの場所に立っている。
このマンションの5階が梓月の自宅だったはずだ。
目の前の真新しいシックな色合いの建物を見上げた。
エレベーターはすぐ開き、俺たちを迎え入れる。
暖房が効いている。
熱い。汗が流れる。しかしこの汗は暖房のせいではないだろう。エレベーターで2人きりだがその間一度も梓月が口を開くことはない。
ーーーーチーン
「はいって。」
部屋の前に着くなり、梓月がこちらを振り返ることもなくドアを開いた。
梓月の匂いーー。
玄関に一歩足を踏み出すなり、甘い匂いが鼻に上がる。
「...お邪魔します。」
俺が中へ入ると、何の躊躇もなく扉は閉まり、梓月の手によって鍵がかけられた。
それだけのことなのに、俺の頭の中は閉塞感でいっぱいになる。
単調に長い廊下を進む。
どうしていいかわからない俺は梓月の後をついて行くことしかできない。しかしその梓月が俺などを気にすることもなく広い家の中を突っ切る。
速い。何なんだよ。自分で家に呼んでおいて、ほったらかしにする気か?
歩くのが早いので俺は少し小走りになる。リビングへ梓月が入って行くのが見えたので急いでそちらへ向かう。
ーーガチャ
そっと、扉を開いて中を見回した。
あれ?確かにここに入ったんだけど...もっと奥かな?
おれはゆっくりと扉に身を滑り込ませた。
「.....っぐぅ....っ」
!?
なななななな!!何だ!!!?
誰もいないと思っていたが間違いだったようで、開いたドアの隙間から手が出てきて、あっという間に俺を押さえ込んだのだった。
両手は背中にねじ伏せられる。
「...ぃた...っ」
俺の背後にいる人物をどうにか視界に入れようとジタバタ暴れて、やっと後ろを振り返ることができた。
「やめっ...くるしぃ...っ梓月!!」
梓月が起こっているのはわかっていたがまさかこんなに直接的に責め立てられるとは思っていなかったので、驚きつつ、その苦しさに耐えきれず梓月を上目で見ながら名前を呼んだ。
なぜか梓月が驚いたような表情をする。
どうしたんだ?あまりしない表情に心配になった。
しかし、それとともに力が少し緩んだのでその隙に、腕へ思いっきり力を入れて、脱出を試みた。
「ぐっ!!...っこんのぉっ...!!」
それはあっけなく成功し、前方へ倒れこむ形でこの状況から脱することができた。
床に倒れた俺は無反応の梓月を見上げた。
「...名前呼んでくれた...。」
ふと梓月が声を漏らす。
名前。さっき俺がくるしい。梓月とすがった時のことだろうか。あんなものほんの苦し紛れだが、それでも少し梓月の表情は和らいでいた。
「...お前」
どんだけ俺のこと好きなんだよ...。
引いているわけじゃない。断じて。しかし同種のものは感じた。
「うれしい.......。」
綺麗な顔で。笑う梓月。
目を奪われる。
「やっぱり。正攻法じゃダメなんだよね。多少無理矢理でもないと。」
梓月はとんでもなく綺麗な笑顔でとんでもなく不吉な発言をした。梓月の真上で光るランプ式の電気が怪しく彼の顔を照らす。
おいおい待て、どうしてそうなる。多少無理矢理とは一体何のことだ。
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