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レンタe-zoはこんな所です
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ターコイズさリクエストシリーズ!
「シネマレストラン放映日、レンタe-zoスタッフ目線。」
これを書くために「シネマレストラン」一本書きました。今月本編にUPします。ワッショイとリンクするので、本編オンリーとは違う楽しみ方があるかな?
(そんなたいそうな物ではありませんが・・・)
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「放映に合わせてディスプレイを変えるぞ。」
店長のお言葉に、あ~もう月末なんだと思った。
友人達に「同じレンタルならGEOもTSUTAYAもあるだろう?」と何度言われたことか。レンタe-zoはこじんまりしたスペースな所が気に入っている。接客はどちらかというと得意ではないのでコンビニのバイトは結構しんどかった。毎日通ってくる人の買い物を見るのは日常を覗き見しているような気分で、ちょっと嫌だった。同じ菓子パンを毎日買いに来るおじいちゃんにバイト上がり時間に待ち伏せられたのが辞める切っ掛け。「バイトはお小遣いの為なんだね。美味しいものを食べさせてあげる。」そんなことを暗い道でいきなり言われたら飛び上がるに決まっている。店長に事情を話して辞めさせてもらった。改札に一番遠い入り口を使うようにしたり、背後を何度も振り向く日々。日常と密接している空間は危険がいっぱい。
その点このレンタルショップはお客さんの数がそれほど多くなかったし、書籍も置いていない。映画しか商品がないので仕事はちょうどいい量だった。
でもそれは少し前までのことで、レンタe-zoは劇的に変わったー客層も客数も。
ローカル番組のスポンサーになって映画を紹介する。そしていい作品を沢山の人に見てもらいたい。「埃をかぶったパッケージなんて見たくないしね。映画は時代を写す鏡だ。」とかなんとか・・・社長の熱い想いが形になった番組のコーナー「シネマレストラン」は静かながら結構熱い波になっている。ドラマ仕立ての短いコーナーだけど、登場人物は皆「映画」を切っ掛けに自分の人生をみつめなおす。問題を解決しようと前向きになる。わからなくはない、私もそれを感じたし、映画を見たいと思ったから。
ただの商品でしかなかった映画が私の中で大きくなりつつある。休みの日に一人で映画館に行くことが楽しみの一つになったし、前よりDVDの稼働率があがった。
「店長、今回の映画は?」
「サムサフィっていうフランス映画。1992年。」
「またもや20年以上前の映画ですか。トアさんって幾つなんでしょうね。」
「30代じゃないかな。」
「すごい量の映画ストックですよね。」
「だなあ。でも社長には負ける。」
社長さんは店長さんのお父さんだったりします。社長の映画愛を見せつけられて育った店長も勿論映画好き(今年50歳のオジサン)
「どんな映画ですか?恋愛もの?」
「ええと・・・巨乳で魅力的な女の子がストリッパーやめて会社員になる話。」
「はあ?」
「このあたりをチョイスするって、俺はますますトアさんが好きになったよ。」
「店長も観た映画ですか?」
「もちろん映画館でね。シネセゾンが配給してたんじゃないかな。あの頃お洒落系はシネセゾンだったからさ。日本監督なら林海象とかね。」
ハヤシカイゾウ・・・初めて聞いた。林さん?林家さん?まさかイゾウではないよね。
「ルイ・マル、アキ・カウリスマキ、エリック・ロメール、ジョン・カサベテス、こんな監督たちの映画だったよな~1990年代。」
店長の映画愛は作品と監督のデータベースを生み出した。もちろん頭の中に。これはとても真似ができないし、おまけに話が長くなる。トアさんじゃなくって店長が出演しても役割は果たせそう。
あ~でも、レンタルショップで店長がお客さんに延々映画のデータを話す図はドラマでもなんでもない。このショップで毎日見られるシーンでしかないから視聴率は稼げないだろう(小太りのオジサンさんだし)
「在庫は?」
「3つ。」
「また予約がでますね。予約票プリントアウトしておきます。」
「そうだね。田村さん、お客さん目線で見てほしいんだ。」
「ええと・・・はい。」
「関連作品があったら借りようかなと思う?」
「俳優や監督ですか?」
「そうなるだろうね。」
「好きな俳優なら借りるかもしれません。監督の他の作品のほうが惹かれるかな。」
「うちの客層はどうかな。」
「客層が完全に崩れましたからね。」
「ある程度広い層を想定するべきか。」
「主演のオーレ・アッテカ・・・「プロバンスの休日」あたりがいいかな。主役じゃないけど忘れちゃいけないのがピカソ女優。ピカソの絵みたいな顔をしているんだよ。だからピカソ女優。」
「・・・どんな顔か想像できません。」
「えええ~田村さん、まだアルモドバルまでいっていないの?」
「アルモドバルって誰ですか?」
「スペインの映画監督。「神経衰弱ぎりぎりの女たち」「キカ」「アタメ」「オールアバウトマイマザー」「トーク・トゥ・ハー」とかあるじゃない。」
「まだ観てません。」
「これがなかなかいいわけよ。フランスはオゾン、スペインはアルモドバル的な。」
どれ的なのかさっぱりわかりません。
「「アタメ」にはA・バンドラスが出てるんだ。女を監禁して縛る男の役。アタメって縛って~って意味。」
「ちょい役のチンピラ役ですか?」
「違うよ、主役。」
アルモドバルさんの映画、タイトルからしてトンデモな匂いがプンプンする。女を監禁して縛る主人公って、どんなストーリー展開?猟奇殺人犯なのだろうか。
「アルモドバル映画にピカソ女優は欠かせないんだよね。関連作品はアルモドバル入れちゃおうっかな。監督は・・・「エリザとエリック」と・・「ガーターベルトの夜」しか在庫がないなあ。いっそのこと女性監督のくくりにしちゃおうか。どう思う?田村さん。」
店長の映画データベースは全て異国の言葉であるので、私には作品名なのか監督なのか、俳優なのか全然わからないのです。
どう思う?って聞かれても、何がわからないのかがわかりません!
そして放映日>>
店内のテレビ前で放映をお客さんとともに見る。開店10:00をすぎてからの放映時間だから、最初の頃は心構えができていた。でも今は違う。店の開店に合わせて来店、店内で番組を見て借りるという強者が現れ始めた。その数は週を追うごとに増えている。どうしても早い物順になるから早くでて来た人が有利になってしまうのは防げない。ある日一番最初に来店したお客さんが言った。
「平等にくじ引きにしませんか?」
そこで開店から番組が終わるまでの間、お客さんは二つ折りの紙に自分の名前を書いて箱に入れる。番組が終わって参加を締め切りくじ引きがスタート。引くのは店長。
ささやかだけど、ちょっとしたイベント感がある。
「引きますよ・・・一人目は・・・」
それなりにタメをつくる店長。名前を呼ばれたお客さんはガッツポーズの人や、ヤッタ!と喜びの声をあげるなどお客さんそれぞれ。
外れた人達は予約票に名前を書く。そして別の作品を何本か借りて帰っていくのだ。月末の日曜日、レンタe-zoは商店街の福引みたいな雰囲気だ。和む~~。
今回の「サムサフィ」は普通がテーマ。普通であること、それにこだわってしまう若い女子が主人公。22歳か・・・私はもうその年齢は過ぎてしまったな。
20代から70代くらいまでの男女がテレビを見詰める。皆で見るというのが映画館みたいで好きだ。番組が終わると自然と拍手が沸き起こる。
「どんな映画か楽しみですね。」
「女性の監督なのか。」
「kissingジェシカも女性制作でしたよね。やっぱり視点が違います。」
「これ見ました?」
「見ましたよ。家がだんだん出来上がっていくって残り時間が・・・って泣きました。」
お客さんたちは知らない人達なのに映画という共通の話題で言葉を交わす。きっとくじ引きを切っ掛けに映画仲間になる人がいるはず(もういたりして。)
レンタe-zoで出会って結婚しました!なんてカップルが現れないかな。それはそれで素敵じゃない?
これといって目的もなく仕事をしてきたけれど、この職場は前向きになれる要素が沢山ある。ギスギスしていないし、適度に緩い。でも映画愛がたっぷりだ。
今はバイトの身だけれど、頑張って正社員を目指そう、私は最近そう考えるようになった。それには社長や店長みたいに沢山の映画を観て映画愛を注ぐスタッフにならなくてはいけない。
アルモドバル的がなんであるかを語れるようになりたい。
映画を・・・語れるようになりたい。
自分のペースでコツコツ映画を自分の中に蓄える。
目下の目標はそれだ。
まずは店内の在庫を全部観ることかな?映画は毎年増えていくから、全作制覇は果てしない野望だ。でもそのくらい大きいほうが達成感もあるしね。
「シネマレストラン」の登場人物みたいに私の人生も映画によって変わるのね。
さて、くじ引きの用意をしよう。
ラッキーな3人は誰になるのかな?
おしまい
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