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蓮 3
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休日の朝でもいつも通りの時間に目が覚めてしまう。サラリーマンとして身についてしまった習性だ。
そして目が覚めるといつもの通り、人の寝顔を嬉しそうに眺めている田上さんと目が合う。
「匠さん、おはようございます。目が覚めたのなら起こしてください」
「おはよう蓮、なぜ起こす必要があるの?こうやって目覚めるのを待つのが楽しいのに。さて、今日はどこへ行くの?」
「どこにも行きませんよ」
「ん?ずっとベッドの中にいるの?」
「独りではどこへも行きません。一緒なら観光したいです」
田上さんの言葉尻を捕まえて、ふざけたつもりが本当に嬉しそうに笑われて、急に自分の台詞が恥ずかしくなる。
「じゃあ、北海道神宮に行くか、それとも札幌ビール博物館にするか・・・」
田上さんはベッドから起き上がるとカバンから何かを取り出した。
「それ・・・買ったのですか?」
田上さんの手には北海道の観光案内が。普段絶対に買わないだろう似合わない雑誌を取り出され、意外さに驚く。
「ん?これ?そう、蓮をどこに連れて行ってやったら喜ぶかなと思ってね」
大切にされているという自負はある。少し過保護な所は否めないけれど幸せだと思う。
「じゃあ今日はお任せします」
「よし、任された。昼はスープカレーにしよう」
「夕飯はあのレストランですね」
旅の締めくくりは優しい場所で優しい時間を過ごす。初めてなのにまるで懐かしい故郷に帰ってきたような気分にさせてくれたあのレストランで。
愛しい人と美味しい食事、それ以上に必要なものはもうない気がしている。
「蓮、出かけるよ」
「あ、はい。今行きます」
開かれたドアの向こうには未来が微笑みながら待っている。
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