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天使と悪魔1
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「やあ、本当に悪魔がいるね」
膝を抱えて泣いていると、頭上から声が落とされた。
顔を上げ、濡れた瞳のまま声のした方を見上げる。
「……ずいぶんときれいな悪魔だな」
泣き濡れた悪魔の顔を見て、天使は目を細めた。
そこは一切の穢れも許さない、真っ白な世界だった。
けれどそんな空間に一つだけ。この空間に似つかわしくない、黒い染みがあった。
「どうしたのですか?」
膝を抱えてうずくまる黒い影に、一人の天使が声をかける。
声に反応して影がわずかに動いた。
黒く艶のない髪に墨を落としたような黒い翼。
それはまさしく悪魔の姿であった。
「泣いているのですか?なぜ泣いているのですか?」
泣きはらした目でじっと天使を見つめる。
天使の問いかけには答えず、悪魔は再び顔をふせて泣き出してしまった。
「悲しいことがあったのですね。ならばわたくしが抱きしめてあげましょう」
天使は心の優しい生き物だった。
両手を伸ばす天使に気づき、悪魔が慌てて叫ぶ。
「そんなことをしたらだめ。悪魔に触れたら天使は消えてしまう」
彼の言う通りだった。
天使は悪魔の体に少しでも触れると消滅してしまうのだ。
しかし彼女は柔らかい微笑みを彼に向けた。
「いいえ、きっと大丈夫です」
悪魔は近づいてくる天使から離れようとするが、体が思うように動かない。
「天界にあっても消えないあなたの体。きっと抱きしめることができましょう」
そう、本来悪魔は天界には入ることすらできない。足を踏み入れたが最後、その体は消滅してしまう。
しかし彼の体は消えることなく、天界に存在していた。
とうとう彼女の手が悪魔に触れ、一つ息をはいた時にはしっかりと彼を抱きしめていた。
しかしさらに一つ息をはいた時、天使の姿は跡形もなく消えていた。
『穢れた混血の半端者よ。お前のその体を使い、天使を消滅させ天界をも我らの物とするのだ』
そう魔王に言い渡され、天界へとやってきた。
サロマは天使の血が混ざった混血の悪魔だった。
半端者のできそこない。仲間からも蔑まれている。
けれどただ一人、魔王様だけは自分を気にかけてくれた。
期待に答えたかった。けれど彼は心の優しい悪魔だった。
自分のせいで天使が消えていく。そのことが悲しくて仕方なかった。
膝を抱えて泣いていると、頭上から声が落とされた。
「やあ、本当に悪魔がいるね」
顔を上げると、一人の天使が悪魔を見下ろしていた。
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