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3.渡良瀬先生3
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渡良瀬の言っていることがわからなかった。さっき明らかに教えてただろ。
またこいつの頭のおかしい言動が始まったかと思ったが、今回はそうではないようだった。
「さっきの答え、本当はアとエです」
渡良瀬は肩を竦めてまた笑ってみせたが、それは俺が見たことのない顔だった。なんだか、不本意に笑わされているような顔だ。
要するにこいつは笑顔で真っ赤な嘘を吐いていたわけか。
「お前も結構やるな……」
「安藤さんを馬鹿にされたのが悔しくてつい嘘を教えてしまいました。……陰湿ですよね、僕」
その嘘は、超わかりづらい、渡良瀬なりのキレ方だったわけだ。
それはいいとして、馬鹿にされたのは俺なのに、どうして渡良瀬が悔しがるんだ。最初に浮かんだ答えから逃れたくて、別の可能性を考えたが無駄だった。やっぱり、想い人を馬鹿にされたから、だよな。
だが正直言って、俺の代わりにあいつをシメてくれたのはありがたい。礼を言うのも癪だから言わないが。
渡良瀬が悔しがる理由についてはこれ以上考えないことにして、話題を据え置く。
「そうだな。まさかお前が人を騙すとは誰も思わないだろうな」
嘘なんて概念すら知らなさそうなあの笑顔を向けられたら、俺も騙される自信がある。ほんの少し、あのチビに同情できた。
「安藤さんのことだけは絶対に騙しませんよ。不快にさせてしまうことは多々あると思いますが」
「まったくだ。お前の気色悪い発言にもいい加減慣れてきた」
「慣れていただけると嬉しいです」
そんな渡良瀬だが、俺も渡良瀬の扱い方が分かってきたような気がする。
気色悪いし、一緒にいてイライラするけど、そんなに悪い奴ではないのだ。すごく変な奴だけど、俺が思っていたよりは普通の男子高専生だ。こんな風に嘘もつけば、軽口も叩ける。ただ、その内容が突拍子もなさすぎるだけで。
こいつさえ味方につければ進級できる。そう確信した俺は、残りの再試に合格すべく、今日も教えを請う。
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