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2.渡良瀬塾3
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その翌日、ただいま四講時目。俺ら、三年通信工学科の面々は、非常に貴重な場面に遭遇した。
「寝るな、渡良瀬」
渡良瀬が、教員に叩き起こされているのだ。あのクソ真面目な渡良瀬が授業で寝ていたこと自体異常だが、今の授業の担当教員は、寝ている学生に出席簿で体罰ギリギリの一撃を与えることで有名な佐藤だった。
佐藤と渡良瀬の異例のコラボレーションに、教室がざわめく。
「こらこら、騒ぐな、お前ら」
授業中とは思えない騒ぎになりかけたが、佐藤の一声で一応ざわめきは収まった。教室がいつもの静けさを取り戻す。
しかし、相変わらず渡良瀬は目を覚まさなかった。それどころか、クラスに新たな爆弾を投下する。
「ん?……、安藤さん……駄目ですよぉ……」
まず、間抜けた声にどっと笑いが起きる。数秒後に、渡良瀬が寝言で俺を呼んだことに対してどよめきが起きた。
誰もが認める優等生でありながらどこか……というか何もかもがズレていて、クラスで孤立気味の渡良瀬。
そして、やたらといかつい留年生で他人とつるまない俺。
二人のぼっちの思わぬ関わりに、皆驚き呆れているらしかった。
それはともかく、誤解を招く寝言は勘弁してくれ。俺、何もしてねぇよ。何が駄目なんだ。渡良瀬の夢の中で俺は何をしてるんだ。
ていうかどうして寝言で俺の名前が出てくるんだ。やっぱりあいつ、まだ俺のことーー
「寝ぼけるな」
佐藤が渡良瀬の後頭部にまた出席簿を叩きつける。さっきのように軽く突つくような感じじゃなくて、今度は歯切れの良い一発だった。
「ひっ!」
渡良瀬はさすがに飛び起きた。甲高い耳障りな悲鳴付きで。
「珍しいこともあるもんだな、あの渡良瀬が寝るなんて。体調でも悪いのか?」
「い、いえっ、すみませんでした……」
少し心配そうな佐藤に、渡良瀬は素直に謝罪した。
でも、こいつならマジで体調悪いときも全く同じことを言いそうだ。そんで、後で急にぶっ倒れたり……ありそうな話だ。大丈夫なんだろうか。
いや、俺は渡良瀬の体調が心配なんじゃないんだ。今日俺に勉強を教える奴がいなくならないかが心配なだけだ。
俺が進級しさえすれば、あいつのことは関係ない。
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