アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2.渡良瀬塾4
-
昼休みが始まった瞬間、渡良瀬はまた寝始めた。いつものように弁当を広げる気配もない。これはまずいんじゃないだろうか。もしかして食欲もないのか?
俺は渡良瀬の側に行き、佐藤のように後頭部を軽く叩いて起こしてみた。
「渡良瀬」
眼鏡も外さないまま机に頭を投げ出している渡良瀬は、ぴくりともせず寝息を立てている。
「ったく、寝るなら眼鏡外すくらいしろよ」
ブリッジの部分をつまんで眼鏡を顔から引きはがす。そういえば、こいつの素顔を見るのは初めてだ。下手したらこのクラスで初の快挙かもしれない。
「……っ!?」
耳あてを耳から外し、完全に眼鏡を奪い取った瞬間、渡良瀬は飛び起きた。
ずいぶん寝起きがいいな……。さっきの授業とは大違いだ。
「かっ返してくださいっ、佐藤先生、僕眼鏡がないと何も見えないです」
「俺佐藤じゃないんだけど」
訂正。やっぱり寝ぼけてやがる。
「えっ、すみませんでした、加藤くん」
「加藤って誰だよ」
こいつ、わざとやってんのか?
いい加減苛々してきたので、眼鏡は返してやった。
「あ……安藤さんでしたか……」
俺から眼鏡を受け取ると、渡良瀬はやっと俺に焦点を合わせる。眼鏡がないと何も見えないほど目が悪いというのは、嘘ではないらしい。
本当に、マンガかと思うくらい典型的な優等生キャラだ。
いや、そんなことを確かめに渡良瀬を起こしたんじゃない。
「渡良瀬、ちょっと面貸せ」
「え……っ、ご、ごめんなさいっ! 僕が全面的に悪いです! な、何でもするのでっ、暴力に訴えるのは……」
言葉のチョイスを間違えたことに気づく。渡良瀬はすっかり俺に怯えて、無意識にか意識的にか、自分の頭を庇っていた。
「そんなんじゃねぇから大人しくしろ。騒がれるとマジで殴りたくなるから」
「すみません、本っ当にすみませんっ! …………安藤さ……ん……?」
前髪を掻き分け、額に手を当てると、渡良瀬は大人しくなった。
「熱く……ない……」
熱は無かった。さっきまで元気に謝りまくってたし、授業中に寝ていたのは体調が悪いからではなさそうだ。
しかしその頬は、まるで高熱を出しているかのように真っ赤になっていた。
「あ……、その、僕……代謝が悪くて……平熱も、あの、五度八分くらいしかなくて……。いやそうじゃなくて、手を、は、離してください……。安藤さんに、その、触れられていると思うと、僕……」
渡良瀬はいつも以上にぼそぼそと、早口で言った。
しまった。こいつがかつて俺に告白してきたホモだということをすっかり忘れていた。俺にとっては何の意味もない行為も、こいつにとってはたちまち深い意味を持つものになるのだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 49