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残さず⑥
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「…?…この肉、食べてないのか?さっきもう食べたって…」
「うん、食べてないよ。違うのを作って食べた。だって、俺は嫌いだし。そいつ」
「……嫌い…?そいつ?」
「そう。だってこいつ、俺の方がお前の事好きなのに、俺からお前を奪うんだもん」
その言葉にまた嫌な汗がじわりと流れる。
まさか。
いや、そんな。
こいつに限ってそんな事する訳ない。
だって
だって…
「お前…もしかして…この肉って……」
「……あれ、やっと気づいた?」
いつもと同じ笑顔の恋人の顔の筈なのに真っ黒な瞳が虚ろで怖い。
思わずガタッと立ち上がり後ろに下がって恋人から離れようとするが、足に力が入らなくてその場にしゃがみ込む。
気持ち悪い。
えずきそうになっていると、いつの間に横にいたのか、恋人が俺の背中をさすった。
嫌だ。触らないでくれ。
そんな思いも吐き気で言葉にできない。
「あれ?どうした?好きなんだよね?だから食べたんだよね?美味しいって言ったんだよね?」
今食べたのは。
美味しいと言ったのは。
「でもこいつも良かったね。最後に可愛がってくれた飼い主に食べてもらってさ」
その言葉に目を見開く。
「……!!!!…あ”…ッッゔぇッ!!」
ビチャビチャと胃液と犬だった筈の肉や米や味噌汁の具が胃から逆流してフローリングを汚してしまう。
「ゔゔ……あ”…はあ……はあ……ゔぇ…」
俺の反応を楽しそうに見ているこの恋人は本当に人間なのか。
「お前が唯一見ていいのは俺だけだよ…まあ、こいつに慈悲としてお前に食べてもらったのは本当にムカつくが、これで最後だからな…でもまさか吐くとは思わなかったよ」
目から涙、口から涎やゲロの跡が付いているのに恋人は俺の顎を掴んでキスをしてきた。
「うあ…ん…む……んん……あ…」
抵抗ができない。
恐怖で身体が言うことを聞かない。
もう恋人が悪魔に見えて仕方ない。
「はあ…はあ………あ……」
視界がぼやけて来た。
吐いた所に倒れてしまうが、どんどん目の前が暗くなっていく。
ああ…犬なんて飼わなければよかった……
「あれ、寝ちゃった?…可愛いなあ……こんなに泣いて吐いて……でももう大丈夫、これからも俺だけがお前をちゃーんと愛してあげるから」
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