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お祭り②
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人生を変える出会いって、案外突然来る。
「お前らァ………………っ!!大人をおちょくっとんのかぁっ!!」
タコ……………違った。
たこ焼き屋のおっちゃん、ついにキレる。
多くのギャラリーを無視し、竜也と京之介目掛けて天カスばら蒔いた。
「おっちゃんっ!!食べ物大事にしぃやっ!!」
お前が言うな。
そう突っ込みたくはなるが、蒔かれた天カスをひらりと避け、竜也が叫ぶ。
「ホンマやぞ!竜也以外のたこ焼きは食わへんけどやなっ、食いもん粗末にしたらバチ当たんでっ!」
お前はもっと言うな。
京之介にいたっては、いまだ毒気が充満してる。
誰か、防毒マスクを。
「食わへんなら、来るなァっ!!」
こうなれば、商売どころではない。
何だ、コイツら。
新手のクレーマーか?
いや、クレームか自分を弄っているのかさえ最早不明だが、商売の邪魔は明らかにしている。
おっちゃん、鉄板挟んで大暴れ。
天カスの次に、マヨがボトルごと空を舞う。
「おいおい、祭りらしゅうない騒ぎやの………………どないしたんや、小野田」
埒の明かないやり取りを二メートル程離れて見る、
黒山の人だかり。
祭りの中でも目立つ景色を捉え、それを掻き分け入る、突然の落ち着いた声。
その声に導かれるように、自ずと野次馬達は、道を開けていく。
「きっ………………木瀬さんっ!!」
木瀬さん。
そう叫ぶおっちゃんは、みるみる顔を青ざめる。
「え?……………………」
さすがの竜也と京之介も、一瞬で変わった空気に後ろを振り返った。
真夏の暑いさかり。
数人のスーツを着た男達の立つ姿は、異様さを見せる。
ヤクザ。
一目で、わかった。
中でも、『木瀬』と呼ばれた男は、今までにない存在感を放っていた。
「……………………ヤクザか」
「ヤクザやな…………………」
ただ、ビビりはしなかった。
ヤクザ相手の喧嘩も、中学からしてきましたから、この二人。
全く怯む事もなく、木瀬達を見据えた。
でも、木瀬もそれにもまして風格が漂う。
「周りのお客さんらが引いとるで…………………お前が大人にならんでどないすんねん」
悪さを晒した二人より、まずおっちゃんを咎める。
穏やかな口調だが、おっちゃんは一気に意気消沈。
まるで叱られた愛犬のように、下を向く。
「は、はぁ…………………すんません。そうなんですけどね…………………」
そうなんですけど、質が悪いんです、竜&京。
サラッとあしらえたら、苦労しません。
「ちっさい根性したガキなんぞ、面白味に欠けるわ。何も臆しない言うんは、気持ちがええやないか」
大人。
三人の攻防を遠目から見ていた木瀬の、どっしりと構えた大人の貫禄に、竜也と京之介も初めてまともなヤクザを見た気がした。
木瀬。
一体、何者なのか。
歯車は回り出す。
些細な出会いが、二人の運命の線を分ける。
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