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そして動き出す
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「もうさ、こういうの······やめるわ」
相変わらず窓を打ちつけるほどの、雨。
その音に、この声がかき消されてしまえばいいという俺の微かな願いは叶わなかった。
「は?······なんて?」
窓の外をぼんやり眺める俺の背後で、湊介が訊き返す。その間抜けな声さえも、愛おしい。
「もう、おまえとはセックスしない」
今度こそ、振り返った俺は言い切ってやった。
真っ直ぐに湊介を見据えて。
「······なに? 急に」
冗談に取られたのか、余裕の表情を浮かべる湊介は濡れた髪をバスタオルで拭いながらベッドに腰を下ろす。
俺よりも筋肉質なその身体のラインはしなやかで、そこを伝う濡れた髪から落ちた雫が妙に湊介を色っぽく見せた。
こいつに······この身体に、俺は抱かれていたんだと思うと、今さらながらに優越感と引き裂かれそうになる胸の痛みが襲う。
「いちいち約束してたわけじゃねぇだろ。今までだって、会えばそういう流れになっただけで」
「だから······っ!おまえのそういう──」
そこまで言いかけて、俺は舌打ちをすると「いや」と濁らせて「何でもねぇ」と服を手繰り寄せた。
湊介の言う通りだ。
俺たちはただ当たり前のように会って、ただ当たり前のようにセックスをする、それだけだ。
何が、それだけだって?あほか。
ただの幼馴染みはセックスなんかしねぇんだよ。
始めから分かってたことだろ。
いつか、こんな日がくると分かっていて······それでも、俺は湊介を求めることを止められなかった。
『あの日』の俺は、こんなに我が儘じゃなかったはずだ。
「俺たちも、もう性欲剥き出しのガキじゃねぇだろ。なにも男同士で処理しなくたって······お互い、ちゃんと可愛い子とか見つけてさ。就職して、結婚して」
「さっきから何が言いてぇの?おまえ」
冷たい声音に阻まれて、小さく肩が強張る。
その声の主の顔色を窺おうと視線を流せば、今、そいつは煙草の箱に手を伸ばして、軽く振って一本を引き抜くところ。それを口に咥えライターで先端を炙りながら思い切り吸い込むと、ふぅっと大きく煙を吐き出した。
湊介の一つ一つの仕草に、夢中になる。
煙草を挟む骨張った長い指。
火を使う時の伏目。
煙を吐き出す柔らかい唇。
あぁ、好き。
全部······好きだ、湊介。
ゆらゆらと燻る紫煙と共に、言葉に出来ない想いが虚しく空に舞って消えていく。
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