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そして動き出す2
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「······彼女、出来た」
震えそうになる声を堪えて、湊介を見ずに告げた。
淡々と服を着ていくと、目の前がぼやけてきた事に慌てて小さく鼻を啜った。
自分で決めたくせに、いざ声にしてみれば潰れたんじゃねぇかってぐらい胸の奥が酷く痛む。
まさか俺が、湊介にこんな台詞を言う日がくるなんて考えもしなかったから。
この台詞を湊介に言われてたらと思うと······死ねるな。
「あぁ······おまえ、処女じゃねぇけど童貞だもんな」
──俺は、違うけど。
そう言われてるみたいでムカついた。
そんな悪意の塊でしかない言葉を投げ捨てられたって、湊介に抱かれた過去の女達に嫉妬してんだからさ、ほんと馬鹿げてる。
だからこうやって思い切り睨みつけてやっても、湊介は満足そうにその切れ長の目を細めるだけで。
どんなに嫉妬して、独占欲を剥き出しにしたところで、今まで俺を抱く湊介が一度だって、俺のモノになったことは無いのにな。
「今さら女とヤれんの?俺を溺愛してる、そんな身体で」
もしかしたら「彼女なんて作ってんじゃねぇよ」って怒鳴ってでも引き留めてくれるかもとか期待してちゃ悪いかよ。
ちょっとぐらい嫌がれよ。
ちょっとぐらい動揺しろよ。
淡い期待をすればするほど思い知らされる──。
「おまえとセックスするより100倍、マシ」
「そうかよ。 で?次はいつセックスする?」
灰皿に煙草を押し付けた湊介が悪戯に笑う。
俺の気も知らないで·····おまえは何年経っても、この想いを伝えさせてはくれない。これからも、そうだろ?
だから、捨てたい。
こんな関係も、こんな想いも。
ただの幼馴染みに戻るだけだ。あの頃に、戻るだけ。
あの頃の、ただ湊介の隣にいるだけの······って、なんだよ、結局それじゃ今とそんなに変わんねぇな。
俺は何も言わずに玄関へと向かうと、湊介を振り返ることなく、けど静かに時間をかけて靴へと足を入れた。
俺は何を、待ってるんだか。
「じゃあ······なんで今日、俺とセックスしたんだよ」
背後から聞こえた湊介の突き放すような声。
鼻の奥がツンと沁みて、いよいよ堪え切れなくなったものが頬を伝った。
もう、これで終わってしまう。
きっともう、あの頃の俺たちにも戻れない。
「湊介と、セックスしたかったから」
振り絞った声で、俺は嘘をつく。
「あ、そ。そりゃそうだな、俺たち──最初からセックスがしたかっただけの幼馴染みだもんな?」
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