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プレゼント
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カフェを出た後の予定は佐藤も特に決めておらず、自然と街中をふらつくことになった。
人がごった返す中を小柄な健太郎が通ることは難しく、何度も人ごみに流されそうになったが、そのたびに佐藤が手を伸ばした。
「面倒がかかる奴だな…ずっと繋いでたら大丈夫だろ」
「あわわわわ」
やがてひっぱりあげるのが面倒だ、とナチュラルに手を繋がれる。
公園で見たあの恋人たちのような行為に健太郎は既にオーバーヒートぎみになった。
掌越しに伝わる体温に手汗をかき始めて、慌てて手を振り払おうとするが、佐藤には離す気はさらさらないようで更に強く握りこまれた。
余計にパニックになった健太郎を置いて、佐藤は暇をつぶせる店を物色していた。
いい感じに古い店が見えたので、入ってみることにする。
アンティークな店内に満足げに頷いて、緊張で震えている健太郎の手を離してやった。
「んじゃ物色タイムな」
「えっええ?」
さっさと移動してしまう佐藤に置いて行かれた健太郎はおどおどしながらも商品を見始めた。
しばらくぐるぐる店内を巡ると、ある商品に視線が釘付けになった。きらりと金属の鈍い光沢を放ち、幾何学的な模様が表面に刻まれた小さな長方形の栞。上部の右端に薄い青色の紐が結ばれている。
大人しい色が大好きな健太郎は、思わずそれを手に取る。
天井にぶら下がる小型のシャンデリアに翳すと、きらきらと輝く。
その輝きに健太郎は惹きつけられ、楽しげに角度を何度も変えて楽しんだ。
「なにしてんの?」
夢中になっていると突然背後から佐藤が光を遮った。
「あっ」
「気に入ったのか?よしよこせ」
慌てて手を引っ込めようとするが、佐藤はその前に翳していた栞を奪い取る。
「あっちょっと!いいです買わなくて!」
健太郎はそう叫ぶが、値段も見ないで素早くレジに滑り込んでしまった。
急いで佐藤の背中に飛びついた時には既にレジから勘定を告げる音が鳴り響いていた。
値段を見ようとするがそれを阻止するように、健太郎の肩を抱いて店を飛び出した。
「ほれ、やるよ」
茶色い袋を手渡す佐藤に、冷や汗をかく健太郎。どうしても受け取れない栞が、恐ろしく高そうに思えてきた。
「こっこんなの買ってもらって悪いですよ」
「あぁ?なに遠慮してんだ。子供は大人に甘えときゃいーんだよ」
渋る健太郎に眉を寄せて無理やり握らせる。困り顔で贈り物を受け取った健太郎に、佐藤が最後の後押しを微笑みかけた。
「俺が受け取ってほしいんだよ。駄目か?」
そう言われてしまえば、もう受け取る他選択肢はなかった。
赤面しながらありがとうございます、と呟くと満足そうな佐藤の手が健太郎の頭を撫でまわした。
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