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眠れない日(kyhr)※修正済
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怖い夢をみた。
繰り返しよく見る、殺人鬼がおれを殺そうとする夢。今どき殺人鬼の夢なんてホラー映画やドラマの見過ぎかなんかだろうって流されると思うけど。
その殺人鬼は1列に並んでいる人間を、順番に殺していく。それだけでも狂気を感じるが、最初は1人2人殺されたら目が覚めていた。
でも、繰り返し見ているうちに、どんどん俺の番が迫ってきて。
さっきみた夢では、おれの前の人が殺されて。
今度はおれが殺される。その直前に目が覚めた。
ここまでなら、まだありがちな夢。
でもその殺人鬼、目が覚める直前おれに言ったんだ。
「次はない」って、はっきりと。
次また同じ夢を見たらと思うと、おれはなんだか寝るのが怖くなって寝室から出た。リビングの明かりをつけ、テレビもパソコンもつけた。
スマホのパスコードを打ち込み皆の呟きを見る。
時間は午前3時を過ぎているから、静かなのもしょうがないけど。
誰か起きてないかななんて特に期待はしていなかった。たかが怖い夢ごときでキヨやみんなに頼ろうとは、思っていない。
でも…
『こわい…』
気が付くとスマホには″キヨ″とのLINEの個人メッセージ画面が開かれていた。
無意識だった。おれ、こんなときまでキヨに頼ろうとしてたのか。
連絡したら迷惑だろうか。
…迷惑、だろうな。
キヨは起きているかもしれないけれど、
出てくれない可能性だってあるし、寝ている可能性だって充分に有り得る。
LINEの通話ボタンをなかなか押せずにいたため、もう諦めようとホームボタンを押そうとした。
バサッ。
突然割と大きな音で何かが落ちた音がして。見ると壁にかけてあった大きめのポスターが床に。
びっくりしたその拍子に通話ボタンを何度か連打してしまった。
『あ、あっ…』
出ないでほしい。咄嗟にそう思った。
だって、なんて言ったらいい?
怖くて眠れないなんてキヨに言ってもバカにされるだけ、目に見えてわかっている。
それなら自分から切ればいいのに、
おれにはそれができなかった。
だっておれは…
「…もしもし」
『…あっ、き…キヨ…?ごめんね、寝てた…?』
「…いや。寝れねえから起きてた」
『そ…そう』
電話越しに聞こえるのは低くて気だるげな声。いつも通りの彼に安心感を覚える。
「どうかしたのか」
『あ…う、ううん…おれも、眠れなくて』
「……はい、嘘」
『えっ…ほんと、だよ』
嘘を見抜かれて少しドキッとした。声が震えて、次の言葉が出てこない。
「なにか、あったんだろ」
どうしてだろう、彼にはおれのことはいつもお見通しのようで。
おれが嘘をついているのも、なにか悩んでいるのも辛いことを隠しているのも、誰より早く見透かしてくる。
おれが落ち着きを取り戻して次の言葉を話すまで
、キヨは黙ったまま電話を切らずに待ってくれていた。
『…おれ…怖い夢、みて』
「……」
『…次寝たらまた、おなじ夢みるかもって思ったら、眠れなくなって…』
「……そういうのさ、フジに言うのかと思ってた」
『…え…?』
おれがフジと仲、いいから…?
まさかキヨからそんな言葉が出てくるとは思ってなかった。
「…そっちさ、お茶ある?」
『え…?いきなり何を言い出すかと思えば…。あるけどさ、君の好きなやつじゃないよ』
「ま、いいや。それで許す」
『え、待って。どうゆうこと』
「だから…怖くて眠れないけど、寝たらお前が困るんだろ?つまり俺が寝させなきゃいい話だから」
つまり、今からキヨがおれの家に来るってこと。
それは、嬉しいけど…そこまで迷惑かけるつもりじゃなかったのに。おれは、電話できただけで満足だったのに。
彼は、いつもおれにそれ以上をくれる。
『…キヨ、どうして』
「俺が暇で相手してやるって言ってんだから、黙って甘えとけよ」
『…は、はい…』
妙に低い声で、それも耳元で囁かれた気分になっていたおれは、もう切るぞ、と言う彼をまって、と引き止める。
熱くなった頬に手をあてて、精一杯の気持ちを伝えた。
『キヨ…ありがとう』
「…うっせ、ばーか」
言い方はぶっきらぼうなのに。その中にすら優しさを含んでいて、思わず頬が緩んだ。
「それより、覚悟しとけよ。マジに寝かせないから」
『…うんっ』
君はほんとに、おれには甘すぎるよ。
end
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途中から最後まで書いた内容が消えるという事件があり、なんとか思い出しながら完成させました。
hrさんがまた怖い夢を見ても、次はきっとkyさんが助けてくれると信じてます。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。それではまた次のお話で。
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