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守られていたのは(kyhr→hrky)
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※ky視点
癒し系男子。
彼にはその言葉がぴたりとはまる。たまにサイコパスなところがあるがそれをなしにしたら超絶癒し系男子。少し高めで、喋る度に周りに花が舞うようなほわほわした声。初めて会ったときは天使でも舞い降りたのかと思った。
ああこんな人本当にいるんだ、みたいな。
でもそれと同時に思った、こいつは俺が守ってやらないと。今まではこーすけが守ってくれてたから周りから毒されずに済んだ。
でも実況をやっていくうえでは周りとの関わりが少なからずあるわけで、俺は常に目を光らせていなければならなくなった。ヒラに手を出したら殺す…まではいかないけど、ヒラは必ず俺が守る、という使命感が芽生えて。奴は誰彼構わず愛想を振り撒くからすぐにとんでもないことになりそうなのだ。
今日もなんとか守りきったところで俺の1日は終わる。…はずだった。
LINEの通知が来たと思ったら、レトさん。内容を見ると、今から飲みに行かないかとの誘いだった。因みに今19時。レトさんはまた別の人に誘われたらしい、俺を巻き込もうとしているんだろう。俺は大抵の誘いは断るから、今回も断ろうとした。
「キヨ、なになに?誰から?」
『わ、あのな…人のプライバシー覗くなよ』
ソファに腰掛けていたところをソファの後ろから首に腕を回して抱きついてくるヒラ。
最俺メンバーに対しては他の人によりもかなりベタベタしてくるのは俺でも気が付いたが、フジによればヒラは俺には特別甘いとかなんとか。
まあ悪い気はしないけれど。
「レトさん?…ねえ、このお誘い断っちゃうの?」
『えっ?ああ、うん。そりゃあ』
今この家には俺たち2人しかいない。お前を1人にしたら心配だし。
「ねぇ行こうよ、キヨ。お誘いを断ってばっかりじゃ相手に申し訳ないよ」
『え…怠いし動くの面倒くさいからやだ』
「おれもついていくし、帰りお茶買ってあげるから、ね?」
お願い、と両手を合わせ上目遣いでこちらを見てくるヒラはどうしようもなく可愛くて。これを断ろうものなら俺は本当に悪魔だ。
こんな子猫を連れていく気はないのにしょうがないなと答えてしまった。
『ありがとぉキヨ』
嬉しそうに微笑むヒラは俺にお礼を告げると出掛ける準備を始めた。言ってしまったからには男に二言は無い。仕方なく財布とスマホと鍵だけショルダーバッグにまとめた。
******
道中変な輩に絡まれないようヒラの腕を引いて片時も離れずに来た。恥ずかしいけどしょうがない、放っておくとすぐどっか行きそうだから。
レトさん達との待ち合わせの店に着くと、既に他にも客がいて席はほぼ満席だった。
「キヨくん、こっちこっち」
手招きするのはレトさん。手を小さく挙げて返事をし、ヒラを引っ張って連れていく。
「わ、キヨ、さすがにこんなとこじゃ迷子になんかならないよ」
『…そういう心配してんじゃない』
その言葉に首を傾げ頭の上にハテナマークを飛ばしていた彼を、テーブル席の壁側の方に押し込んで、俺が隣に座って出られないようにする。向こう側の席にはレトさんと…俺はほとんど会わない某実況者の人2名。
「キヨくん、あれ…ヒラくんも一緒かぁ、久しぶりやね」
「どうも、キヨの付き添いで来ました」
レトさんはまだヒラと面識あるから安全といえば安全なんだけど、問題はあと2人。
初対面の奴はヒラを女の子だと勘違いしたり可愛過ぎて手を出そうとする奴もいる。
「ヒラくんて可愛いと思ってたけど、生で見るともっと可愛いね」
「あ、ありがとうございます…、」
「声も高いね、本当に男?」
「は、はい…」
ほら見たことか、その照れる様な仕草もするからいけないんだぞ。相手の男かなりヒラに興味津々じゃん。
『ラーヒー、どれ飲む?』
「んっ?ええと…」
すかさず話題を変えメニュー表を見せヒラの肩をぐっと抱き寄せた。ヒラの髪からほんのり甘い匂いがする。
『俺そんな酔う気ないからカクテル弱めの頼む、このオレンジのやつ』
「あ、じゃあおれも同じのがいいな」
『そっか、わかった』
店員を呼んで注文を済ませると1分としないうちにドリンクが運ばれてきた。速いのはいいことだけれどこの店、どういう仕組みなんだろう。
それから1時間が経った。大抵の奴らは俺がヒラにベタベタしてるのを見て諦めてくれるから助かるのだが、どうやら今回もそのようで酔っていてもナンパ染みた会話はしてこなくなった。
「ほんまにキヨくんとヒラくん仲良いなぁ、羨ましいわ」
ふとレトさんが呟いた。確かにベタベタしてる様子は仲良い風に見えるんだろうが、俺からしたらヒラを守るのに必死なのでそんなことまで考えていられない。
『え、そう見えんの?否定はしないけど』
「ずっと肩くっついてるやん、付き合ってるのかと思ったわ」
「へっ?そ、そんなわけないじゃないですか」
「冗談だよ冗談」
慌てた口調のヒラの様子が気になってちら、と見ると頬がほんのり染まっていた。少し酔ってきた所為だろう、俺はヒラに何を期待しているのやら。
レトさんは冗談で言っただけ、それにヒラも当たり前の様に返しただけなのだから。
「キヨさんは好きな人とか居ないんですか?」
『俺は…今のとこは居ないかな。のぞみーる一択』
「はは、そうですか。よかった…」
ちょっと待て聞き逃さなかったぞその言葉。よかったってなんだ。俺がヒラを好きじゃなかったからよかったってことなのか。手を出す気満々かよ、だとしたら許さん。
来るんならいつでも来い、返り討ちだ。
「よかったら、これ俺の連絡先です。後で追加とかでも全然大丈夫なので…」
と言ってLINEのIDを書いた紙切れを俺の方に差し出した。なんだ、ヒラが目的じゃないのか。いいや、まずは俺に取り入って安心させてから彼に手を出すつもりなのでは。残念だったな、考えはお見通しだ。
『あー、…一応貰っておきます』
渋々受け取り財布の中にしまう。個人情報だから一応気を遣ってやったけど、登録する気もなければ寧ろ流出させてやろうかと思ったくらいだ。
その様子を見ていたヒラは、どんな顔をしていただろうか。
気になったけれど見ないようにした。
なんだ、この胸のもやもやは。
俺はヒラに…嫉妬してほしいなんて思ってる。
友達を取られると嫉妬する女子みたいな感じなのか。それとも…。
「キヨ、そろそろストップだよ」
ヒラはグラスを持つ俺の手を優しく解いて、そのまま指を絡めた。
「帰ろ…?」
どうやら俺は相当な量を飲んでいたみたいだ。勧められるうちに、酒がどんどん回って。現在22時、時間の経過すらもわからなくて。まだ皆は飲めるようだけど酒にあまり強くない俺はそろそろギブアップであることをヒラに気付かされた。
『…ん、』
呂律が回らないので頷いて一言だけ返した。
それからのことは、あまり覚えていない。
ただ、レトさんたちに挨拶して、そこから記憶がなくていつの間にか家に帰ってきていた。
ようやく意識が戻った俺はベッドに寝かされており、ヒラが部屋にいないことに気が付く。
『…ひら、…ヒラ!?』
嫌な予感が頭を過ぎる。まさか。まさか、俺が酔い潰れている間になにかあったんじゃ。
心配になりベッドから出ると、二日酔いの頭痛がきて、その場に蹲る。
「キヨ…?大丈夫!?」
部屋に入ってきたヒラは傍まで来て肩を貸し、俺はまたベッドに戻される。
『…ありがと』
「もー、二日酔いなんだから無理しないでよ。あとこれ、お茶買ってきたよ」
はい、と差し出された俺の好きなお茶を受け取る。そういえばお茶買ってくれるとか言ってたっけ、買いに行ってたのか。ヒラが無事に帰って来られてよかった。
「ごめんね、帰りに買おうと思ったんだけど、キヨのこと送るので精一杯で」
『いや…俺も、あんなに飲むつもりはなかったんだけど。ヒラがストップかけてくれなかったら今頃どうなってたか…』
「ううん、気にしなくていいんだよ。
それより、あの男の人の連絡先、どうするの?」
『え…』
「キヨはあの人と、友達になりたいの…?」
不安そうな顔をして、じっと見つめられる。
そんな顔されたら、絶対俺の負け確定じゃん。
正直に白状してしまいたい、そう思いながら。
『…捨てるよ、だって』
受け取ったのはヒラに妬いてほしかっただけなんだから。
「…、おれ、さっきの人たちに嫉妬しちゃった。レトさんにも」
『…へ…?』
我ながらなんとも間抜けな声が出た。
嫉妬ってことは、ヒラはもしかして俺のこと…。
「キヨ、あの人に狙われてるの気が付いた?てっきりおれのほうを狙ってると思ったんじゃないの」
『へ、え?』
「途中からお酒勧められてさ、キヨはまんまと引っかかってずっと飲んでたし」
なに、こいつ。鈍感だと思っていたのにそれが本当ならすごい洞察力。
確かにヒラは周りの目を人一倍気にするけれど、今までは1度だってこんなこと言われなかったのに。
今のヒラは普段見る様な天使のスマイルの面影すらない、声も少し低めの、1人の男性だった。その事実に、今更ながら改めて気付かされた。
『どういう、こと…』
「おれの方に周囲の目が向いてくれればよかったのに。…キヨ、ほんと鈍いんだよなぁ」
『ヒラ…、…まさか…』
出来ることなら聞きたくない、受け入れたくない言葉を、彼から言い渡される。
「狙われてるのは、キヨの方だよ」
ヒラのことは俺が守ると、あんなに使命感を燃やしていたのに。それが一瞬にしてなくなってしまった今、俺の中で何かがガラガラと崩れていく。
本当に守られてたのは
どっちなんだ
end…?
######
長いうえに上手くまとまらなかったです…
両想いとはまだ気が付いていませんが、お互いに守り守られていた。でもキヨさんにとってはそれは複雑な感じに…。
ここまで読んでいただきお疲れ様でした。
ではまた次のお話で。
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