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暑さの所為にして(hrky)
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※hr視点
「らーひいぃ」
気怠そうに後ろから抱きついてくるのは付き合ってそろそろ2ヶ月になる俺の友人であり、恋人でもあるキヨ。
甘えてくるのは別に構わないんだけど、暑い。
今何月だと思ってるの。7月だよ。くっつくとかバカじゃないの。
『離れてよ、暑い』
ぐい、と押し返すけれど彼は細いくせに力は強いので俺の力では敵わなかった。
「無理、動くの怠くなった」
『キヨは暑くないの』
「んー、好きだから気にならない」
『…はあ』
どうしてこうもキヨはストレートにさらっと言ってくるかなあ、そう言われて離れるに離れられなくなるのはおれのほうなんだから。そんな恥ずかしいことを面と向かってなんておれにはまだ言えない、童貞だもん。
おれも好きだよ。
心の中で答えながら照れ隠しにスマホをひたすら弄った。
「ラーヒーもそのゲームやってるんだ」
『ん?うん、今皆やってるからどんなゲームか気になっちゃって』
「でもすげーランク高いじゃん、俺この半分だよ」
1度ハマると課金しながら一時期寝る間も惜しんでプレイしてるから、割と順位もランクも上の方だったりする。
でもおれみたいなのはザラに居るし、キヨみたいに普通にゲームを楽しんでいるというより最早作業になってしまっていることが多い。
ゲームの内容自体は面白いんだけどね。
「……眠い」
『え?ベッド行く?』
「…んー、ここでいいや」
『え、ちょ…ちょっと待って』
ただでさえ抱きつかれて暑いのにここで寝られたらおれもう汗だくで脱水症状でどうにかなりそう。冷房をちらりと見るとご丁寧に故障中と書かれた貼り紙がされていた。他のメンバーも使うからだろう。
『せめて窓くらい開けてよ…』
「…んー…」
あ、やばい寝そう。
『キヨ、ねえお願い離れて?離れてくれたらなんでもお願い聞いてあげるから』
「…ほんと?」
『う、うん』
すると眠気は何処へ行ったのやら。まるで眠くもなんともなかったかのようにおれから離れた。
「じゃあ…お願い聞いてもらおーか」
『え?キヨ、まさか…』
彼の企んだ様な笑みで一瞬にして全てを理解した。おれは騙されていたのだ、眠そうなフリをしたキヨにまんまとハメられてしまった。この手に引っ掛かるのは3回目。
結局おれがキヨの言う事を聞くことになる。
でも彼がこの手を使う時は、なにかしらおれに言いたいことがある時だったから今回もそうなのだと思った。心の何処かで不安がチラつく。
前は、フジにベタベタくっつき過ぎ、
こーすけと2人で旅行なんて浮気だろ、
という内容だった。
言われてみればおれは友達にはベタベタしているかもしれない。旅行は、こーすけの手伝いとして行っただけ。
でもね、2人は友達だよ。
それ以上でも以下でもない。
キヨにとっては言い訳がましいかもしれないけどおれは2人を、友達か親友として以外見た事がない。
それでなんとか納得してもらえたはずだった。
それでもキヨを不安にさせているなら、おれは恋人失格じゃないか。
『キヨ、ごめんね…?』
「…は?」
『おれ…いつもキヨが不安になるようなことしちゃって』
「…何言ってんの?」
『だって、今回もおれに何か言いたい事があるんでしょ?』
「言いたい事は確かにあるけど、そんなんじゃねぇよ」
ふに、と人差し指で頬を突かれた。
普段は見せない、おれだけに見せる優しい表情。それだけで安堵した。彼は怒っている訳でもなく、不安そうな顔もしていない。
『な、なに…?』
「……す」
「すきって言って…、ほしい」
時折目を逸らしながら話す少し震えた声の彼が、どうしようもなく愛おしく思えた。
付き合ってから2ヶ月経とうとしているのに、未だに好きと言えない自分が情けなくなる。
「言ってくれたことなかったから…なんか俺だけ好きなのかなって思っちゃって……だめ…?」
頬を朱に染めた彼は首をこてんと傾げて今にも泣き出しそうな潤んだ瞳でこちらを見つめていて。
気が付いたらおれは彼を抱き締めていた。
『す、……好き、好きだよ、
大好きだってば、キヨ』
大好きなんて何年ぶりに人に対して使ったろう、おれの記憶では小学校低学年で終わっているような。しかも母さんに対してだったと思う。
「…へへ。嬉しいよ、ヒラ」
恥ずかしさに埋もれていたおれを彼はぎゅっと抱き締め返してくれた。
大好きなんて割とばかにされると思ってたおれは拍子抜けしたけど、でも自分の気持ちを言えたことで1歩前に進めた気がした。
『…はああ、余計暑い…』
キヨとくっついてるし顔は発火しそうだし身体は火照るしで、今日は散々な日だ。
散々だったのにまた彼は爆弾を投下してくる。
「今日、一緒に寝てもい?」
『は……?』
こっちは暑くて死にそうなのに、けろっとした顔なんかしてさ。別にいいよなんて答えたけど、この暑さで既に理性を保つとか言っている場合ではなくなって。
おれもう、だめかもしれない。
end
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更新遅いですがしおり、いいねしてくれた方ありがとうございます!
ここまで読んでいただきありがとうございました。それでは次のお話で。
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