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好きな人の前では(hrky)
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※hr視点
彼はおれにとって、
憧れの人で、
大事な友達で、
いつか隣を歩けたらと思うくらい、
大好きな人。
そんな彼と1日何時間も一緒に居られるおれは幸せ者で、他の人よりも恵まれているなあなんて勝手に思っている。
意地悪するくせにすぐ優しくなったり、
動画では有り得ないくらいハイテンションで子供っぽいのに裏ではクールで格好良かったり、
コロコロ変わる彼はどこか謎めいていて、
どれが本物のキヨなのか、たまにわからなくなる。そんな彼に魅せられて、惹かれておれは恋に落ちた。
『キヨってさ、…好きな人いないの?』
「?…いつも言ってるけど」
『いや、その人じゃなくてさ』
「ガチなやつ?…んー…」
彼はテーブルに頬杖をついてここ最近で1番真剣な顔をしながら考え込んでいる。
おれはキヨの友好関係にまで干渉しないからわからないけれど、友達に女の子がいない訳ないし好きな人の1人くらいいてもおかしくない。
こんなことを聞いて苦しくなるのは自分の方だけれど、おれには彼の心は覗けないから。まず知らなければ始まらないと思った。
「……いるっちゃいるけど」
『へ…、へぇ、どんな人?』
少し胸が痛むけど、これでキヨの好きな人のタイプがわかる。…そう思っていた。
「……、よく、わかんない奴」
『…え?』
よくわからないって、それタイプ以前の問題なんじゃ。
「なんかさ、こいつ可愛いなーって思ってたらいきなり格好良くなったりさ。少し…いや、だいぶ頭おかしい奴なんだけど、赤の他人でも親身になれるすげー良い奴」
『なにその人…頭がおかしいとか…キヨ、その人はやめた方がいいんじゃない…』
俺ですら引いた。
可愛い格好良いとかは置いておくとする。
女の子で頭のおかしい人なんて、そんな人にキヨは譲れない、というか任せられない。そんな人に奪われるくらいなら先におれが奪う。
「え?……ヒラは、そう思うのか…。
……そう、か…」
『…キヨが、好きなら…止めないけど。万が一にも、その人のせいでキヨが傷つくことがあったら…』
「…心配してくれてんのか、ありがと。
ほんと優しいのなラーヒーは」
『…べ、別に?昔のおれみたいに失恋しないでよね』
ふい、と素っ気なく返しそっぽを向いて話に興味のない振りをした。
ズキンと胸が痛んで息苦しくなる。
君は酷い奴だ、人の気も知らないで。
お願いだから、そんな優しい表情(かお)してみせないでよ。
たとえどんなにおかしな人でもキヨに好きになってもらえるなんて、羨ましい。
今までも幾度か恋をして、結局叶うことはなかった。それはそうだ、最初から望みがないとわかっている相手だったから。
「…ラーヒーはそういう人いないの?」
『…、いる、けど』
「ふーん…、俺も話したしどんな人かくらい聞いてもいい?」
確かに、キヨが教えてくれておれが教えないのは公平ではないので、おれは好きな人の客観的な当たり障りのない部分を言うことにした。
『…えっと…意地悪で、うるさくて、暴言ばっかり吐いて…下ネタも言う…』
「待て待て待て待て、なんだそいつ本当に女子か!?悪いことは言わないからやめとけよ」
……女子じゃ、ないけどね。
『…なんで?』
「そんな悪口ばっかり出てくる相手のこと、本当に好きなのか?」
当たり前じゃない。キヨだもん。
『好き、…だよ』
「お前頭おかしいと思ってたけど、まさか好きな人もそういう奴なのか…」
彼はどこかがっかりした様な表情で天を仰ぐ。
頭おかしいとかキヨに言われたくないし。
キヨの好きな人だっておかしいじゃないか。
『でも本当はすごく優しくて、格好いいんだ』
「…ギャップ萌えってやつ?
はー…、こんなことなら、もっと早く言うべきだった」
『なにを?』
「だから…お前のことが好きだ、ってさ」
『…へっ!?』
「気付いてなかったんだ、やっぱり」
いくらなんでもその告白は急過ぎる。
心も頭も追いついてこなくて、硬直したまま顔だけが熱くなる。今のおれ、すごく変な顔してるんだろうな。
じゃあさっきキヨから聞いた好きな人の話は、全部おれだってこと…。
「…でも、ラーヒーが好きなのは女の子だし、俺は想いを伝えたらスパッと諦めるつもりでいたんだけど」
嫌だ。
「ほんとにごめん、びっくりしただろ?
気持ち悪いとか思ってくれていいから。
それにもうこんな気持ち捨てるからさ、今まで通り…」
嫌だよ。
おれだって君が好きなのに。
『…っ、』
咄嗟に彼の腕を掴んだ手はどうも震えが収まらなくて。女の子に告白した時みたいに、ちゃんと言葉に出来ずに下唇を噛んだ。
「…ヒラ、」
彼は様子の可笑しいおれを心配してか眉を下げる。そんな顔させたくなんてなかった。
なのにやっとの思いで出た言葉はあまりに素っ気なくて。
『キヨってさ、頭良いのに…バカだよね』
「…」
『おれが好きな人に告白されて、なのにそれも全部無しにされて、全部今まで通りになんてそんなことできると思うの?』
「……!…は、…え?ヒラ…?」
俺の言葉の意味に気が付いた彼は目を見開いてぱちぱちと瞬かせる。その反応が可愛くてつい笑ってしまった。
「な、…バカにしてんだろお前」
『だって君の顔が面白いんだもん』
「人の見た目笑うとか最低だな!あークソ、なんで好きになっちまったんだろうな」
顔を赤くした彼は決まりが悪そうに頭をガシガシと掻いた。
『ごめんね、意地悪とか暴言吐くとか言ったりして』
「…いや、気にすんなよ。今思えばそれは間違いなくおれのことだわ」
『…うん』
お互いの想いが伝わったことはすごく嬉しいのに、照れくさくて彼の顔をまともに直視出来なくなる。
彼の前では余裕のある振りをしてみせておきながら、心には余裕なんてあるわけがなく。
でも今の彼もきっと同じ気持ちなのだと思うと自然と笑みが溢れてきて、いつもの調子で彼に向き合う。
『ねえ、キヨは可愛いおれと格好いいおれだったらどっちが好き?』
「は?…な、いきなりなんだよ」
『いーから!答えて』
そう言って彼を振り回す。
彼は心底困ったような顔で悩んでいた。
本当に意地悪なのはおれの方なのかもしれない。
これからもおれは、君のことがすごく好きなくせに、必死に余裕のある振りをしてみせるから。
「…そ、そんなのどっちもじゃ…」
『だーめ』
だから
もっともっと、
おれを好きになって。
end
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久しぶりの更新となりました、そして10000アクセスありがとうございます。これも読んでくださった皆様のおかげです。
これからも気ままに更新致します。ではまた、次のお話で。そろそろ、hrkskのお話もまとまりそうなので次はそちらになるかと思います。そして今回もまとまらない(汗)
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