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勇者の話
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俺は魔王が憎かった。
倒したくて、死にものぐるいでレベルを上げていた筈なのに…
「たす、け、て…お兄さん」
倒れる直前に言った魔王の言葉。
小さな声で他の仲間にはきっと聞こえていなかっただろう。
一番そばにいた、俺だけが聞いたその声に何か懐かしいものを感じた。
「お兄さん!」
過去の記憶がフラッシュバックする。
昔出会った魔族の男の子。
素直で可愛くて人を疑うことを知らないあの男の子の別れ際の寂しそうな顔は今でもよく覚えている。
「ニーナ、なのか…?」
血の気を失い真っ青な顔で倒れている彼はあの時よりも成長してはいるもののその面影は残っている。
相変わらず人の目を引く美しさだ。
どうして君が魔王なんだ…
本当に君が街に疫病をもたらしたのか?
「リオル、魔王の治療を!」
魔法使いの少年に俺は言う。
倒したかった筈なのに、彼を見て死なせたくないと思ってしまった。
「はぁ!?何言ってんだよ。そいつは…」
「お願いだ、リオル。」
「…ったく、あんたらしくない。」
グチグチ言いながらもニーナの治療をしてくれる仲間想いのリオル。
他の仲間も不思議そうな顔をしながらも見守ってくれた。
この2年間、魔王を倒す為だけに生きてきたと言うのに…
この憎しみを何処に向ければいいのだろう。
「どうして君が…」
イライラする。
俺は頭を抱えるしかなかった。
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