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どろどろの邪心(6/12)
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しばらくして、少年は我の尻尾をまさぐる事に満足したのか、離れて川の中へ入っていく。
「白!遊ぼー!」
「…はぁ…っ、く…ぅ……この状態で…っ、遊べるか、小僧…っ!」
我は火照る身体と乱れた呼吸を直そうしながら、少年をギロリと睨む。
だが、狐の面を被っているため、先方は我が今どんな表情をしているか分からないだろうな。
「白……どーしたの?」
「……」
「尻尾触られるの、気持ちよかったの?また触ればいい?」
「…断じて違う!二度と触るな」
「怒ってる?」
「あぁ」
「泣きたい?」
「……そうかもしれんな」
沈黙の間を、さらさらと流れゆく川の水音がゆったりとうめていった。
少年は我の狐の面に顔を近づけると、そっと目を閉じる。
そして、ちゅっと小さな音をたてた。
「…小僧……今、何を…」
「白のおでこにちゅーした。
かーちゃん、俺が泣きそうな時、いつもしてくれるんだ……勇気がでるおまじない。
"男の子は泣いたらいけないよ"って」
「……」
「どお?白、泣きたくなくなった?」
「……初めて会ったときに大泣きしていた小僧に言われたくない」
「あ、ひでー!もういっかい白の尻尾触ってやる」
「おい…!やめ……っ」
……久しぶりにヒトの子と遊び、声をあげ、驚き、…笑った。
我と少年の服が乾いた頃には、日は落ちかけていた。
……楽しさを知れば、寂しさはより身に染みる。
もう……心が引き裂かれるような、あんな気持ちにはなりたくない。
この少年と会うのは、今日で最後だ。
夕焼けの色が、やけに目に染みる。
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