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尋ね人と待ち狐(10/22)
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白は建物の中に入ると、俺を床に下ろして立て掛けてあるロウソクに近づく。
白がふうっと息をはくと、そのロウソクの先にボッと火がついた。
部屋が明るくなると同時に、俺の表情も明るくなる。
「わあっ…!すげー!! 白が口から火を吹いた!
白、今のどうやったの?」
「お前にはできぬ。我が化け狐だからだ」
白はそう言うと、部屋の角に置いてあった紙袋を持ってきて、軋む床板に腰を下ろす。
俺もくっ付くように白の隣に腰を下ろした。
白は紙袋の中に手を入れると、毛糸で編まれた"あるもの"を取り出す。
「マフラー……?」
「ヒトの子は成長が早い。手袋はすぐに小さくなってしまうだろう」
白はぎこちない手つきで、そのマフラーを俺の首に巻きつけた。
白が……俺のために編んでくれたマフラー…。
「ありがとう、白。すっごく嬉しい…」
「……」
ニコッと笑ってお礼を言うと、白が首の後ろをかいて俯く。
白、また照れてる……かわいーなぁ。
俺がマフラーにもふもふと顔をうずめていると、白が小さな声で話し始めた。
「我は……なんとも思っておらぬ者に尽くしたりなどしない」
「……?どーゆー意味?」
「…つまりだ…!嫌いな者のために、苦労してマフラーを作るわけなかろう。
お前のことが……好き、だから…編んでやったのだ…」
「……白」
俯きながら話す白の耳は真っ赤で、声が少し震えていた。
どうしよう……何か嬉しくて、ムズムズした感じのものが胸に込み上げてくる。
今の白をぎゅーっと抱きしめてあげたい。
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