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尋ね人と待ち狐(12/22)
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白はしがみつこうとする俺の手をはらい、諭すように話を続ける。
「小僧、お前の母親が病にかかったとしよう。どう思う?」
「かーちゃんが……?やだ…かーちゃん苦しむの、見たくない…!」
「心配だろう?それはお前が母親を愛しているからだ。
母親ももちろん、お前を愛しているだろう」
「うん…」
かーちゃんは、俺が大事な子供だって……大好きって、いつも言ってくれる。
「小僧、お前は先程何と言った?
"病気ぐらい平気"…?お前が平気であっても、母親は平気でなかろう」
「……」
「お前が母親を心配するように、母親もお前が病にかかると同じように心配するのだ。
母親に限らず、お前を愛でている者は大勢いるだろう」
頭の中に、かーちゃん、とーちゃん、ばーちゃんや学校の友達の姿が思い浮かぶ。
「お前の身体はお前だけのものではない。
自分の存在の重さを知れ、小僧。
愛する者を幸せにしたくば、自分の身体を大事にしろ」
「……」
俺は……みんなの悲しむ顔、見たくない。
みんなが、大好きだから…。
でも…でも……。
「俺、ちゃんと大人になるよ…。でも、白は……?俺が見えなくなったら、白…ひとりぼっちで、寂しいんじゃないの……?」
「……」
「白が寂しい気持ちになるの、俺、嫌だよ…!
大切な人が傷つくのは悲しい!
俺にとって白も大切な人なんだ。白のために…大切な人のために、何もできないなんて…悔しいよ、白…っ」
「…小僧」
白は俺の背中に腕を回すと、抱きしめてきた。
耳元で、白が囁くように言う。
「今の真っ直ぐで素直な心を決っして忘れるな。……すれば、大人になろうと、我が見えるだろう」
「……ほんとに?」
「あぁ」
……よかった…。
白の相槌を聞いたら、体の力が一気に抜けた。
大きな背中に手を回し、白にぎゅうっと抱きついていると、白が俺の頭を撫でる。
そして、小声でつぶやいた。
「愛する者を信じ……時に疑え、ヒトの子……。我は…お前に手をかけたくはないのだ…」
「…?白、何か言った?」
「……いや…」
俺の頭を撫でる白の手が、少しだけ震えていた。
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