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尋ね人と待ち狐(15/22)
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山の主から昔、聞いた。
"ヒトの血肉を喰らえば、不老不死の身から解放され、再びヒトの子として生まれ落ちる事ができよう"……と。
まだ"裏切り"を知らぬ若い頃の我は、ヒトを喰らおうなど、微塵にも考えてはいなかった。
だが、やがて"それ"を知る。
"長く生きることが辛い"という事も知った。
それでも、ヒトの子を喰らおうとはしなかった。
…信じていたかったのだ。
だが……もう、終止符を打つ。
この少年は、どんどん我に近づいてくる。だから怖いのだ。
達希に裏切られてしまったら……どんなに苦しかろう…。
達希の血肉を喰らい……我はヒトへと生まれ変わる。
少年よ……愛する者を悲しませたくなくば、我を疑え。
我との約束を、破れ。
傍にいてほしいが、裏切ってほしい。
我は今、そんな自家撞着に陥っている。
…何とも不思議な感情よ…。
「白……俺が白を幸せにする。だから、もう安心していいよ」
「……そうか」
「でも俺、白を山から連れ出して、キレーな所、いっぱい見せてあげたいな。
白の呪いは、どーやったらとけるの?」
「……言えぬ」
「…白……?」
お前を殺せば、我は幸せになれる。
……そんなこと、言えるわけがなかろう…。
何故か目頭がじんわりと熱くなり、涙が両頬を伝う。
止まらぬ……どうして涙が止まらない…。
…狐面を被らなければならぬ事に、初めて感謝した。
今の我の情けない顔を晒さずにすむ。
達希の傍で、声を殺し静かに泣いた。
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