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尋ね人と待ち狐(20/22)
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小首を傾げると、白が俺の頬に温かい手のひらをそえてくる。
「……いいか?
この世に"無駄な死"などない。
お前は大好きな祖母を失い、悲しくて苦しいだろう。
だが、この世にはお前と同じように、大切な人を失った悲しみと苦しみに溺れている者が沢山いる。…分かるな?」
「…うん…」
「大切な人を失う悲しみや苦しさは、同じつらさを味わった者にしか分かり合えぬし、救えぬ」
「……うん」
「お前は祖母の死を目にし、大切な人を失うつらさを学んだ。
"同じ痛みを抱えている人を救うことができる人間"になれたのだ。
祖母の死を誇りに思え。
お前の祖母は、死してなお、お前をヒトとして成長させてくれたのだ」
白は俺の涙を指でぬぐいとると、俺の背中を押す。
「もう言わずとも分かるな?
祖母の死を無駄にしたくないのなら、同じ痛みを抱えている者を救え。
今まさに、一人いるだろう……祖母の死を嘆く者が。
……早く己の手で救いにいけ」
「……かーちゃん…」
ばーちゃんの前で泣いてるかーちゃんの背中は、いつもより小さく見えた。
かーちゃんはきっと、今も一人で泣いている。
「白…、ありがとう」
俺は一言告げると、白に背を向けて駆け出す。
かーちゃん、待ってて。
目をごしごしとこすりながら、かーちゃんの元へと走った。
……もう、泣くもんか。
「かーちゃん…かーちゃん…!!」
「…達希…?」
ばーちゃんの部屋に駆け込むと、かーちゃんは涙を流しながら俺の方を見た。
俺はそんなかーちゃんに近づき、ギュッと抱きしめる。
「…達希……」
「だいじょーぶ……かーちゃん、大丈夫だよ。俺がずっとかーちゃんの傍にいるから」
よしよしと、かーちゃんの頭を撫でる。
すると、かーちゃんが俺の背中に腕を回してきた。
「ごめんね…っ、達希…。達希も悲しいのに……」
「悲しいよ。けど、平気。ばーちゃんは、俺と一緒にいて幸せだったって言ってくれたから。
それに、かーちゃんも、とーちゃんも、俺のこと大切に思ってくれてる。
だから、寂しくないよ」
「…たつ…き……」
再び泣きはじめたかーちゃんを、俺は精いっぱい抱きしめた。
……白があんなに優しいのは、大切な人をたくさん失くしたからなのかもしれない。
白の苦しみが、今になってちゃんと解った。
白、もう一度約束するよ。
俺は絶対に白の傍から離れないから。
ずっと一緒にいるから。
大好きだよ。
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