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ちぎり、ちぎり(14/21)
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……冷たい大きなしずくが、俺の頬を打った。
白い体毛を纏った妖狐の姿の白は、唸り声を上げて俺を見下ろしている。
肩に食い込んでいる白のかぎ爪が痛い。
でも、そんな痛みは白の表情を見た瞬間消え去った。
──泣いてる……どうして?
どうして泣いてるんだ、白は。
白の幸せの為に今まで俺は……泣かないで、笑ってくれよ、白。
一緒に喜んでよ。
──白と最後に別れた高1の春。
進路について、両親や先生と話し合った。
自分の成績上、無難なA大に行くということは決めていた。
けど、かーちゃんの口から願ってもない言葉が発され、進路を変えることにした。
"B大に行くなら近場にあるばーちゃん家から通い一人暮らしをしていい"と。
俺がその話に食いついたのは、言うまでもない。
一人暮らし……それにばーちゃん家から通うなら、毎日会うことができる…大好きな白に。
ただ、そこの大学を目指すのは、頭の悪い俺にはキツかった。
でも……でも。
やっぱり少しでも長く、白と一緒の時間を過ごしたいなぁ……。
白も、そう思うよな?
課題を自分の力で解かず、いつも友達のを丸写しにしていた俺。
そんな俺が、初めて参考書を買い、嫌いな勉強と向き合った。
"今の成績では合格は夢の夢"
諦めたほうがいいと、何度も周りの人に宥められた。
けど、誰の言葉も耳に貸さない。
俺の頭の中は"白"という優しい狐の存在だけが占めていた。
必死に勉強していたら、あっという間に夏休み。
なのに一向に成績は伸びない。
苛立ちと、焦りが募っていく。
今、白に会いにいってしまったら……勉強どころじゃなくなる。
毎日、夕方まで一緒に遊びまくってしまうだろうな。
大事な勉強時間が……。
迷った末、俺はあの山へ行かなかった。
みんなが青春の一ページを刻んでいる夏休み、俺は勉強漬けの日々を過ごした。
会いたい……けど、我慢。
今我慢したら……幸せな日々が待ってる。
白も分かってくれるよね?俺、頑張るから。
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