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ちぎり、ちぎり(16/21)
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白と最後に会った日から四度季節が巡り、桜の花びらが舞う春。
ようやく……ばーちゃんがいた地へ足を運ぶことができた。裏山を、下から見上げて微笑む。
白……とうとう戻って来たよ。……ただいま。
やっと合格できた。これからはずーっと、一緒にいられるよ。
どうやって話を切り出そうかな。
聞いたらどんな反応をするんだろう?
どんな声で照れて笑って、喜んでくれるんだろう?
久しぶりに会うんだ……日が落ちるまで白とお喋りをしたい。
夜空を一緒に見上げながら、夜明けまで。
かーちゃんに帰るのが遅くなると断っておいた後、急いで小祠へと続く石の階段を駆け上がる。
早く掃除して、白を探さないと。
はやる心を必死に抑え、ほうきで小祠の中の埃や枯葉を掃きだしていく。
石畳みの土埃を掃いてるとき、自分の左手の薬指にある指輪が木漏れ日を受けてきらっと輝いた。
それが目に映り、頬が緩みそうになる。
指輪……白、喜んでくれるかなぁ。
上着のパーカーのポケットの中に手をそっと入れ、小さい箱に触れる。
……幸せな未来を思い描いていたその時だった。
ざりっと、砂利を踏みつけたような音が前方から聞こえたため、顔を上げる。
そこにいたのは……俺がずっとずっと、会いたかった人。
狐面を被った白が、俺を見つめ立っていた。
「……白……」
「……」
「……あ、えっと…」
何か……、照れ臭いなぁ。首の後ろをかいて笑ってごまかす。
どうしよう。どんな風に言って、驚かそう?
とりあえず「忙しくて来れなかった」と言って誤魔化そう。
そんでその後、とびっきりの幸せな知らせを伝えよう──。
……そうするはずだったのに。
何故か、今、俺は白に襲われ地面に組み敷かれている。
どうして……どうして、こうなったんだ……?
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