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別れ・想い人に懸けるもの(8/16)
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「病を克服し、我の元へ帰ってこい。
我はここで、ずっとお前の帰りを待つ」
「……!? だから、病気は絶対に治らないって言っただろ…?帰ってこれないんだよ」
「己が身が滅びるまで、我は達希を待ち続ける」
「俺の話聞いてんのか……!? 治らないんだって…」
「……」
真っ直ぐに俺のことを見据える、白の紅の瞳。
その眼差しを受け、分かってしまった……白の言いたいことが。
白は優しい狐だ……その事は、俺が一番知っている。
本当は分かってるんだ、白は。
俺の病気が治らないことを。
……もう二度と帰って来れないということを。
かーちゃんやとーちゃん、色んな人達が俺を愛している。
"その愛する人達に囲まれて死ぬ"……俺の中での最大限の幸せを叶えるために、遠回しに言っているんだ。
来ないと分かっていて「いつまでも待っている」という白。
そんな風に言われたら、「待つな」なんて言えない……言えるはずがない。
熱い涙の粒が、再び頬を流れ落ちた。
何度目を擦っても、涙がすぐに滲んでくる。
「白…の馬鹿……っ、馬鹿……」
「悪口を叩くほど元気があるのだ、病が治らないはずがない」
「……っ、うぅ…っ」
本当は、白だって泣きたいくせに。
我慢して強がるなよ、白……。
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