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第一章~高校2年生・春~9
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*Side 久夜
「お前らー授業始めんぞ、
……なにこのお通夜みたいな雰囲気。何かあった?」
「別に何もないです。あ、廣川は保健室です。」
「体調崩したか?氷野は?」
「呼びましたか?梁瀬を保健室に連れてきました。顔色が優れなかったので、今は寝てます。」
「……そうか。ありがとう。
じゃっ、授業始めるぞ!(……絶対何もなかったなんて雰囲気じゃないんだけど)」
担任が教室に入ってきて、授業を始める。
教室はシーンと静まり返っていつもの教室じゃないみたいやった。
……完全に俺のせい。
分かっとる、暴走したんは俺。
久我に八つ当たりしたようなもん。
謝らなあかんな。
「あいつ、寝る寸前にお前の名前呼んでたよ。
…まぁ直前にしてた話が話だから俺らのせいでもあるけど…、久我は何も悪くないっぽいから謝っといた方がいいんじゃない?」
「……そか、迷惑かけて悪かった。久我にも後で謝る。」
「早くさっきのこと、梁瀬に言えば?
あいつはお前の過去知ったくらいで離れないと思うけど。」
さっきのいざこざなんてまるでなかったように教科書を開く氷野はあくまでもいつも通りで。
本気俺だけが馬鹿みたいに焦ってただけ。
…こいつの焦る顔とか逆に見てみたいわ。
「せやね。」
そろそろ限界なんやろな。
本当のことを隠すのは。
梁瀬がそれくらいで離れるとは思っとらん。
ただ、俺が言いたくないだけ。
くだらない反抗期のようなもので、適当に過ごしていたあの日々を。
本当は思い出すことだって嫌なのに。
それで壊してしまったものを、梁瀬に知られたくない。
……でも、あんな顔はもう見たくない。
俺のせいで泣かせるなんてしたくない。
「めっちゃ怖がらせてしもうた…」
「梁瀬は優しいから許してくれるだろ。」
「それはそれで心苦しいもんやね。」
あの時の怯えた顔を、多分俺は一生忘れられない。
あんだけ泣かせないって、優しくするって決めたのに。
結局泣かせたのも、怖がらせたのも俺とか。
全然笑われへん。
「……俺、まだ梁瀬のこと諦めたわけじゃないから。
なんだったら奪いに行くよ。」
「それは、あかんね。梁瀬は渡せへん。」
俺が唯一本気で大切にしたいと思うた。
会って確信した。こいつを守るんは俺やって。
あの日、泣いていた背中を見た日から。
それは今だって変わらない。
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