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第一章~高校2年生・春~13
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「千先輩!お久しぶりです。」
「一ヵ月ぶり、くらいかな?部活はどう?頑張ってる?」
「世那先輩のおかげでなんとか…」
「ふふっ、大変だもんね。でも頑張れてるみたいでよかった。」
久夜の誘いを断ることは出来なくて、結局家まで来てしまった。
八尋先輩に促されるままリビングに行けば、キッチンで千先輩が夜ご飯の支度をしていた。
手伝いましょうか、って言ったけど、断られてしまった。
…手持無沙汰なまま千先輩と話しをする。
邪魔になってなきゃいいんだけど。
「…でも今日は元気がないみたいだね。久夜くんと何かあった?」
「喧嘩、みたいなものなんですかね…ちょっと色々あって。」
「そっか。梁瀬君はどうしたいの?」
「え?」
「このままはいや、なんじゃないの?」
「それは…、そうなんですけど……」
でも、だからってどうすることもできなくて…
話したいこと、って何だろう…
もしかして別れ話、とか…?
思いっきり拒絶しちゃったし…
久夜もその後めちゃくちゃ気使ってくれたけど…
でも…別れ話だったら、どうしよう...
嫌だな。
俺、久夜と別れたくない。
別れたくないけど......
「おい千、梁瀬泣かすなって。」
「ごめんごめん。質問の仕方がよくなかった。じゃああとは八尋に任せるよ。」
「そうして。なー梁瀬、俺と話そ。」
「八尋先輩…」
戻ってきた八尋先輩は少し切なげな顔で笑う。
俺の泣き顔を見て、ティッシュをくれたけど…
「青春、してるなぁ…」
「え?」
呟いた八尋先輩は俺の頭に手を置いて、にかっと笑った。
「好きな人のことで泣いたり笑えたり、悩みながら辛くても、やっぱり好きだって思ったり。
そうゆうのって今しか経験出来ないことだと思うよ。」
「……そうなんでしょうか?」
「答えは、1つじゃない。俺にとってはそうでも、梁瀬にとってはそうじゃないこともある。
それでも俺はな、色んな経験をして、梁瀬自身が色々考えてそれで最後に久夜を好きだって思ってくれればいいなって思ってる。」
「………」
「久夜は、器用に見えて意外と不器用なんだ。
あいつの過去は確かに誉められたものじゃない。それは本人が一番よく自覚してることだから。
だから出来れば、久夜の話を聞いてあげて欲しい。聞いた上で、そのあとは梁瀬の好きにしていいんだよ。」
「先輩は優しいんですね。」
多分久夜の過去のことを知ってるんだろうな。
優しくて、相手のことをちゃんと考えて…
俺は、先輩みたいにはなれない。
「梁瀬、優しさは正義じゃない。もちろん重荷にすることでもない。
久夜の優しさが梁瀬を苦しめてるならそれは久夜に言うべきだって俺は思うよ。」
「………そう、なんですかね…」
久夜の優しさは俺にとって凄く大きいものなのに。
それを否定したら俺は、俺すらも否定してしまうことになるんじゃないの…?
それは違う気がする。
「……俺は、久夜の優しさを否定したくはありません。いつだって俺を助けてくれたのは久夜の優しさだから。
でも、」
思う。
俺は久夜の優しさにたくさん救われてきた。
だけど、その優しさが誰よりも縛ってきたのは久夜自身なんじゃないかって。
「久夜の優しさが久夜を苦しめてるなら俺はそんな優しさいりません。」
誰よりも優しい久夜が、そのせいでたくさんのものを犠牲にするくらいなら、そんなもの最初から無くていい。
「答え、でてんじゃん。」
「えっ……あ、そっか。」
俺はやっぱり久夜が大切だ。
無くしたくない。諦めたくない。
怖くても、向き合わなきゃいけない。
前に、久夜が俺に告白してくれたときみたいに。
「よし、梁瀬の答えも出たところで夜ご飯食べるか。
千~~飯出来てる?」
「うん。あと運ぶだけ。あ、必要なドレッシング類は各自でよろしく。」
「運ぶの手伝う。」
「あ、俺も手伝います!」
「梁瀬は久夜呼んできて。部屋にいるはずだから。」
「……はい。」
リビングをでて、階段を上る。
何を話そうか、どうやって伝えようか。
ごちゃごちゃと考えては、あれもだめ、これもだめと頭の中で会議をしてたらすぐ久夜の部屋の前まで来てしまった。
小さく吸った息を、ゆっくり吐き出してから扉をノックした。
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