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そのさん。
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「先にチケット買っとくかー」
「あ、チケット買ったよ。13時30分のでよかった?」
モールについて、第一声に氷崎くんが言った。そうだった、と僕はさっき予約した映画のことを言う。
「え!おう!ちょーいい!めっちゃいい!ありがと!あとで金払うな。今デカイのしかなくて」
「ううん。要らない」
「?そー言う訳にもいかねーだろ、友達だし」
ともだち。その言葉を頭の中で繰り返す。そっか、友達、友達か。頬が緩む。仕方ない事だ、と思いたい。友達なんて呼べる人、今までいなかった。なんていい響きなんだろう。
どきどきする。やっぱり、お金貰うわけにはいかない。
「じゃあ、友達になった記念に!僕の奢り!」
「記念、て…友達になったの、半年前じゃん」
呆れたように氷崎くんが口元に手を当てて笑う。その姿にまたドキドキ。氷崎くんが笑ってくれると、僕も嬉しい。僕の事で笑ってくれるならもっと嬉しい。僕も一緒に笑ってるならもっともっと嬉しい。僕の嬉しいは最近めっきり氷崎くんに関してだ。
お昼ご飯はモールの中にあるハンバーガー屋で済ませて、そのまま映画に入った。映画で氷崎くんはポップコーンとホットドッグ、チュロスチョコ味とジュースを買っていて、さっきも食べたのにすごいな、と思った。けど、映画が始まる前の予告の時点で、ポップコーン半分以外食べ終えてたもんだから僕はまた驚いた。
映画は中々面白かった。
最後、殺されたヒロインが時間移動のお陰で、殺された過去がなくなって、何もなかったかのように出てきたときは僕も氷崎くんも驚いた。
そんなんありかよ!って氷崎くんは小さく呟いていた。だって氷崎くんヒロインが死んだとき少し泣いてたもんね。
氷崎くんに泣いてたよね、と言えば、焦った顔をしてあっちを見て、こっちを見て、あーー!と頭を掻いて、眉を下げて、僕の顔を覗き込んで、「…秘密な」だって。その時は、2人の秘密か、と思って少し喜んだけど、僕は気付いた。
秘密な、って、ああそうか。
"松崎くんに”秘密な。なんだね。
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