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暗がりの彼女
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「ひ、人違いじゃねえの...じゃあね」
そう言って背を向けようとした瞬間
猫を抱えたままの両手を掴まれてしまう。
「んなわけないじゃん!なにしてんのカミエちゃん!」
「ちょ、声が大きいですよ!」
上江は慌てて相手に顔を近付けて、
猫を押し付けて相手の口を抑えた。
全くとんでもない相手に見つかってしまった。
顔を近付けたことではっきり見えたその人物は、
まさに渦中の會下詠慈その人であった。
會下は顔に押し付けられた猫を剥がすように触れた。
「あなたこそ何してるんです..こんな時間に出歩くなんて」
「これ新しい恋人~」
上江はいつもの調子をなんとか取り戻そうとキリッとした目付きで相手を睨んだ。
會下もいつもの調子で抱えた猫に口付けた。
それを聞き、はぁ..とため息をこぼす。
今度は猫かよ...と。
「ていうかあれだね..
カミエちゃんオフは以外とワイルドだね...」
會下が苦笑しているようなので、
上江は半分留め忘れたボタンを思い出しそれを見下ろした。
ああ、やばい。
しかし慌てふためく体力すらなく上江は片目を細めて笑ってやった。
「ああ。これはどうか見なかったことにしてください。」
そう言いながらボタンを留めて、上江は彼に背を向けた。
「..最初猫を虐めてるヤンキーかと思った...」
「人聞きの悪いこと言わないでください。
私は弱いものイジメはしません」
ボタンを留め直して、
さてどうしたものかと回らない思考回路で考えた。
相手はあの會下詠慈だし、
変に小細工するより堂々としていた方がいいのかもしれない。
当てつけのように思われるのも癪だったが。
一先ず眼鏡を探さなければ。
心当たりがあったので上江は何も言わずに
公衆トイレに歩いて行った。
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