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1発やると、さすがに理性が戻って来た。
ユウの腹がぐーっと鳴って、ぶはっと笑う。真っ赤になってんのが可愛いな、と思ってたら、オレの腹も鳴った。
「ごはん、食べようか?」
ユウが真っ赤な顔のまま、オレの腕をすり抜けてベッドを下りる。
下を全部オレに脱がされたままで、シャツ1枚で、裸足で、ふらーっと歩いてく様子がスゲーエロい。
オレはっつーと靴も脱がねーで、股間くつろげただけの状態だ。
自分のガッツキぶりに、さすがに引いた。
日本じゃねーんだし、床は土足でいーんだろうか?
ひとまず下りて服を直し、ベルトを締め直しながらベッドを見て、シーツの汚れを観察する。
色々汚れてっけど、土汚れはねーな。
けど、そういう問題でもねーか。
キッチンの方に移動すると、いかにも欧米風って感じの見慣れねぇコンロの前に、ユウがいた。
洋鍋を温め直してんのか? ポトフ?
尻がギリギリ隠れるくらいの丈の、シャツ1枚で。オレの出したののせいか、内股がいやらしく濡れててエロい。
「ワリー、シーツ汚しちまったな」
謝りながら近付くと、ユウはちらっとこっちを振り向いて、「いいよ」と言った。
「どうせ全部捨てるし」
全部捨てる――?
全部って何だ?
改めて見回すと、随分ガランとした部屋だな、と思う。
天井は高ぇけど、家具が圧倒的に少ねぇ。
小さい冷蔵庫と、カフェかってくらい小さいテーブルに、古い籐椅子。小さい食器棚が1つ。
食器棚の横にはダンボールが置かれてて、中にはジャガイモやリンゴ、文字の読めねぇ調味料みてーなんが無造作に入れられてる。
でも生活感ったらそれくらいで、後はなんか、妙に空っぽな感じの空間だ。
スペースがやたら、余ってるっつーか……そんな広い部屋でもねーのに。天井が高ぇから、そんな風に見えんのかな?
白い壁にはいっぱい何かを剥がした跡があって、そこだけ更に白い。
形や大きさから、写真かなと思うけど――それはマジいっぱいあって、破った思い出がどんだけ多かったんかを示してた。
「タク君、食べよ?」
ユウが湯気の立ったスープ皿を2つ、小せぇテーブルにコトンと置いた。
それから今度は冷蔵庫の前に行き、中からサラダを出してくる。
「もう遅いし、パンはいらないかな?」
とか訊いて。エロい格好して、くるくる動き回る姿を見てると、なんか新婚ごっこでもしてるみてーだ。
「貰い物だけど、勿体ないから」
そんなセリフと共に、白ワインが開けられる。
ペアのワイングラスに元カレの名残を感じながら、オレはゆっくりと籐椅子に座った。
「何に乾杯する?」
ワイングラスを持って訊くと、ユウは戸惑ったみてーに視線を泳がし、それから顔を上げて、つっかえながら言った。
「新、婚旅行の、おわ、りに」
一瞬ドキッとしたけど、いや「ユウの」新婚旅行のことか、と思い直す。
「……お前の?」
そっと訊くと、「うん」って言われた。
「長かった」
「ふっ、確かにな」
日本を出て3年――この、高い天井の生活感のねぇ部屋で、ずっと日本に帰れねぇままだったのか。
家具も少なくて。照明もカーテンもシンプルで。飾りっつったら、残された思い出だけで。
旅行だから生活感がなかったのか?
でも、じゃあこれでやっと、ユウの『旅行』も終わるんだな。ようやく解放されんのか。
良かったな、と思うと同時に、じわっと期待が高まってくる。
乾杯の後、ワインを一口飲んで、ユウがおずおずとオレを見た。
「あ、の、お願いがあるんだ」
顔が赤い。
シャツの胸元をギュッと握り、スゲー緊張した様子で、「だめなら、いいんだ、けど」と前振りした後。
ユウは顔を伏せ、目を閉じて言った。
「成田まで、オレと……新婚旅行、してください」
言われた瞬間、思わずガタッと立ち上がってた。
軽い籐椅子が後ろでひっくり返ったけど、どうでもいーし。
「マジか!?」
大声で訊き返すと、ユウはちょっとビビったように頬を引きつらせながら、それでもこくりとうなずいた。
「フリだけで、いいから」
とか、ぶつぶつ言ってんのも聞こえねぇ。
ははっと笑える。
「いいに決まってんだろ」
オレはそう言って、ズボンのポケットから昼間デパートで買ったモンを出した。
「フリだけ」なんて言われなくても、オママゴトだって分かってる。けどオレは、ホントの結婚相手より、もうユウの方が多分好きだ。
ユウにもそうなって欲しい。
今はまだ、元カレの代わりでしかねーのかも知んねーけど。でも。
「じゃあさ、これからは『コレ』を見るたび、オレのコト想ってくんねーか?」
銀と黒の、独特のデザインをしたメンズリングを、オレはユウの左手にはめた。
一瞬、1週間前の同じシーンが頭の隅をよぎったけど、それはマジ一瞬で通り過ぎた。
過去だ。
今この瞬間、目の前にいるのは女じゃなくてユウで。ユウは薬指にはまったメンズリングを、ぽかんとした顔で見つめてる。
「……こ、れ……」
指輪とテーブルとオレとに、キョドキョドと落ち着きなく視線を揺らしたユウは、男のくせにやっぱ可愛い。
しかもサイズピッタリだ。
オレのよりワンサイズ下だな、って思った自分の勘が当たって、嬉しくていっそ自慢してぇ。
「頼むから、成田で投げつけたりしねーでくれよ?」
そう言うと、昨日のバーでの会話を思い出しでもしたんだろうか? ユウが「しないよっ」つって、くすっと笑った。
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