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06
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次の日の朝、宮緒はいつも通り早めに学校に来ていた(と言ってもやはり一時間目は始まってはいるのだが)。いつもと同じようにポテポテと歩き、教室に着くと机にうつ伏せになる。
そうして二時間目頃にクラスメイトは登校してきた。今日もクラスの癒しである宮緒と挨拶を交わし、満足そうにそれぞれ談笑を始める。例えばそれは高校生らしいくだらない話題であったりもするのだが、耳を澄ませば時々聞こえる不穏な族や不良の物騒なものも存分に含まれていて、やはりこの高校は普通とは違うことを証明していた。
ほどよくざわつくクラス内に、顔を机にうつ伏せにしたままだった宮緒が不意に止まったざわめきに不思議に思って顔を上げた。周りにいた、親しくないわけでも、特別親しいわけでもないクラスメイトの目に浮かんだ、畏怖と憧憬の混じった色を宮緒は逃さなかった。彼らの一点に集まる視線の先をゆっくりと辿る。するとそこには。
「ぁ」
昨日の。そう音も無く吐き出された言葉は空気に溶けて消えた。小さな、本当に小さな宮緒の呟きに、教室のドアの近くに立つ彼はすぐにその存在に気づいた。
「…見つけた」
男、新はカラフルなクラスの中に一際目立つ艶やかな黒髪に、目を愛しげに細めた。傍から見れば不機嫌なソレ。だが新から発せられるオーラがそれを覆していた。
ただただ、甘い。その甘さに当てられたクラスメイトを横目に、宮緒は僅かに目を丸くした。そんな宮緒を見てより一層目を細めた新は、そのスラリとした長い足で教室に足を踏み入れる。クラスメイトはその様子を固唾を呑んで見守っている。
学校のトップを誇る彼を羨望の眼差しで見ながらも、内心悔しさが滲み出る。
(あぁ、俺らの猫姫が!)
(大切に隠してきたのにっ)
(唯一の俺たちの癒しがトップにバレた…!!)
心の中で盛大に嘆かれていることなど知るはずもない宮緒は、目の前まで来た新を見上げた。
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