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「俺は真瀬新。お前は?」
威圧感のある低い声。しかしその中に甘さも混じっていて、宮緒はパチリと一つ瞬きをした。じっと目の前の男を窺う。
「…まなせ、あらた」
宮緒は男の名前を舌の上で転がせて、もう一度男を見上げる。辛抱強く待つ新に、コクリと頷いた。
「新谷、宮緒」
桜色の唇から発せられた声に思わず新は酔いしれる。既に知っていた少年の名前を、本人から聞きたいという新の我儘ではあるが、しかし新は満足していた。
(毒のようだ)
漠然とした呟きを心中に留める。宮緒の全てが、存在が毒のようだと新は思う。ただ短く発せられた声音さえ、甘く侵食してくるのだ。
「宮緒、と呼んでもいいか?」
「うん」
コクリ、と首を上下に動かせた宮緒にホッと息を吐く。
「おれは何て呼ぶ?」
舌足らずな様子で「おれ」と言う宮緒に、新は知らずの内に頬を緩めていた。
「新でいい」
「あらた?」
「ああ」
「あらた…うん、新」
何度も新の名前を呼び、口に馴染んだのを確認して宮緒は頷いた。
「新は、おれに何か用?」
「…ああ、」
忘れるところだったと新は苦笑する。宮緒に呼ばれる自分の名前が恐ろしく甘美に聞こえて仕方が無い。うっとりと脳が蕩ける初めての感覚にまた酔いしれた。
「昼は弁当か?」
気を引き締め、新は問う。
「うん」
「なら一緒に食べないか?」
「いいよ」
宮緒はあっさりと承諾して頷く。新は宮緒の黒髪にポスリと手を乗せた。指どおりの良いその髪に自然と笑みが浮かぶ。
「昼に迎えに来る」
「…うん」
撫でられるのを甘受して気持ちよさそうに宮緒は目を細めた。2回ほど往復してから離れていく大きな手を名残惜しげに見送る。新が去った後も、クラスの中はふわふわとした雰囲気が漂っていた。呆然とクラスメイトは閉められたドアを見つめていた。
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