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宮緒にとって新という存在はまだ曖昧でふわふわと漂っている。ただ、いつの間にか気づかぬうちに一緒になって寝ていたという事実に、無意識に気を許しているのだろう、とぼんやりと宮緒は思った。
宮緒の新に対する態度は他者から見れば明らかに普段と異なっている。いつもは無表情無関心なはずの宮緒だが、新といる時だけは少なからず感情が表に出ている。そのことに本人が気づいているのかどうかは分からない(否、恐らく気づいてはいないだろう)。それ以上に、新もその事実に気づいていないために宮緒が読めないのだ。傍から見れば案外分かりやすいというのに。
一方、新にとって宮緒の第一印象はすでに地に足を下ろしている。第一印象は「猫」っぽい少年。しかし不思議と安心する彼の雰囲気に新は惹かれたのだ。
もちろん、常識人である新は、男同士であることに酷く悩んだ。だが持ち前のサッパリした性格で「好きなものは仕方が無い」とスッパリ結論を出した。悩みも宮緒の前では脆く崩れ去ったのだ。
そうして案外スッキリした面持ちで宮緒に会いに行ったのだが。惚れた弱みというかなんというのか、フィルターがかかっているというのは自身でも分かっているつもりなのだが、あまりにも宮緒が可愛らしくて理性が切れたのだ。
理性が切れたにしては触れるだけの口付けではあったが、それでも相手は何も知らない純粋な男で、たった数秒の触れている間に「嫌悪されたら」とか「拒絶されたら」などと考えていた。
困惑した声音で自分を呼ぶ宮緒に、もしかするとこれから彼に触れることが出来ないと思うと、切ないような、寂しいような、そんな胸を鷲掴みにされるような感覚に陥って、だけれどもいつかはこの甘い温もりから離れなければいけないと思うと、どこか勿体無いような気がしてもう一度だけ触れるだけの口付けを落とした。新は拒絶を覚悟して宮緒の顔色を伺った。
しかしそこにはただ困惑と驚きに目を瞬くだけの表情があった。つり目がちの大きな瞳は、新が直視するには無垢すぎて気づけば謝っている自分がいた。そんな新に宮緒は「どうして?」と聞き返し、新は更に戸惑った。この少年はキスをした意味に気づいてないのだろうか、と。ただ愕然と宮緒を見つめた。宮緒は首を傾げながらも新を見つめ返す。
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