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「渚、お化粧しない?」
「しない…けど、」
「渚、お化粧させて?」
「夏生……そもそもうちに、化粧品の類はないんだよ?」
夏生の突拍子のない発案は今に始まったことじゃない。
いきなりか噛みつかれた時は「美味しそうだった」と言われ、髪を結われた時は「サラサラだから沙羅子と名前を付けよう」と微笑まれ、今回はこれ。
金色の毛並みをした猫を飼っている気分になる、とついつい呆れてさせたいようにしてしまう私にも責任はあるのだろうけど夏生の¨お願い¨に私はとことん弱いのだ。
「化粧品ならある、揃えてきたんだ」
「揃えたって……まさか」
「ごめんね」
にっこり悪びれなく笑う夏生には流石にため息がもれた。
どうして人はお金持ちになると金銭的な感覚が鈍るのだろう、夏生の場合は若くから大金に触れすぎた故なんだろうけど。
サラサラと私の髪をいじりながら、二人して横並びにソファーに身を深く沈める。
昼間からこんなにだらだらとしていて良いのかと世の中のニュースを見ていると心配になるけれど、夏生にも、私にも、この鳥籠みたいなマンションの部屋にも関係ない。
「無駄遣いはダメって…言ったのに…」
「そんな顔しないで、渚。しょげた顔もとっても可愛いけど今は笑ってて欲しい」
夏生が笑えと言うのなら、私は笑う。
それしか知らないから。
夏生以外知らないから。
「これ、絶対に高い…」
ガサガサと乱雑に袋から現れる大量の化粧品たちを手に取りながら聞いたこともない名前に目を通す。
何となくだけれど安いものじゃない事だけはわかる、そもそも夏生はどんなにくだらない物でも高い物しか買わない。夏生の中では高い物=買うに値するものと認識されているらしい。
その度に、この金髪の青年に呆れるのは与えられる私。
「渚にはねー、絶対にピンクが似合うとおもうんだ」
「そんな可愛い色は似合わないよ…」
「大丈夫、渚は可愛いから」
元より話なんて聞く気はなかった様子でパカパカ手当たり次第に夏生は化粧品の蓋を開けていく。
青や赤、ピンクやオレンジ、様々な色を前にしながら私も少しだけ興味がでる。
それを見た夏生は破顔したように極上の笑みで私を抱きしめて頬にキスした。いつもの流れ、抱きしめて、好きと甘すぎる声で紡がれて、キスされて。
そんな夏生を受け入れる私もおかしいのかな、と頭では考えながら。
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