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冷たい指、僕のものとは違う夏生の長くて冷たい指。
心が温かいのかと都合のいい解釈も出来るけれど、静かにされるがままになって髪を結われていると本当に人形になってしまったように感じてしまう。
長い黒髪を結われて、前髪もサッと分けられる。
「渚の肌は本当に綺麗だ」
「肌だけ、…なんだ」
「拗ねないで渚。全部、全部可愛いよ。だいすき、渚あいしてる」
「夏生…」
ぎゅうっと抱きしめられながら、化粧を諦めてくれるのかと考えれば指先は顔の輪郭をなぞりながら瞼に触れる。
夏生が好きだと言ってくれた髪は大切にしているし、夏生が笑ってくれるために僕の笑顔が存在している。だから夏生がこの顔を望まないと言うのであれば、僕はきっと喜んで顔に刃でも立ててみせるだろう。
「渚、目を閉じて?」
僕を可愛いと言うけれど、僕からすれば夏生の方が人目を引くし魅力的な顔だもの。
そんな夏生に愛していると言われるたびに世界中の人からの嫉妬が僕を取り巻くのではないかと心が痛くなる。
夏生は盲目的に僕を愛してくれるから、僕はきっと目がなくても、足がなくても、声がなくても、例え心がなくても何不自由なく生きていけるだろう。
「ん、」
瞼を下ろすと暗闇の世界。
真っ暗なそれを恐れる事もなく、僕はただ肌の上を滑る夏生の指だけに意識を向けた。
「睫毛……長いね」
「そうかな、普通じゃない?」
「ううん。とっても綺麗」
息を感じつ距離で言葉を聞き夏生が化粧品を漁る音が聞こえる。
でも目を閉じて、いくら待っても何かが肌に被さる感覚はこない。
「なつ、お」
「うん?」
「しないの…?」
「あははっ、なんだか今の渚の言葉クるね」
むっと目を開けると喉の奥で笑いながら、笑顔で僕の方を見ている夏生がいた。
綺麗に染められた金髪あ揺らぐと、夏生は僕の肩に顔をうずめながらクスクスと声を殺す様に震えて笑い声を我慢していた。
あぁ、なんだか今日の夏生は構ってほしがりな上に甘えたがりなんだなと思っているうちに夏生がいつもみたいに優しい手つきで僕の曲線を愛おしそうに撫でた。
「こんなものしなくても、渚は可愛いもんね」
「私…化粧品なんて似合わないから…」
「余計な事をして渚の可愛さが隠れちゃうと、悲しいね」
「じゃあ、しなかったらいいのに」
ほくそ笑む夏生は転がる化粧品の山を足で蹴りどけながら、僕の身体を引き寄せた。
もっともっと近くに、もっともっと夏生のものに、そうやって僕の中に夏生が溶け込んでくるのを瞼の奥の暗闇で感じた。
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